2007年8月、名古屋市で帰宅途中の女性が見知らぬ男たちに連れ去られ、命を奪われた。男たちは事件の少し前、犯罪の仲間を募る匿名掲示板を通じて知り合っていた。名古屋闇サイト殺人事件は、顔も本名も知らない者同士が短期間で結びつき、現実の犯罪へ進んだ事件として大きく報じられた。
面識のない三人が集まった
三人の男は「闇の職業安定所」と呼ばれた掲示板で接点を持ち、2007年8月21日に初めて顔を合わせた。それまで互いに面識はなかった。金を得る目的で複数の計画を話し合い、うまくいかないまま、通りかかった女性を狙う方針へ移ったと裁判で認定されている。
8月24日の夜、三人は名古屋市内で、一人で帰宅していた31歳の会社員女性を車に連れ込んだ。金品とキャッシュカードを奪った後、顔を見られたことを理由に女性の命を奪い、岐阜県内へ遺棄した。具体的な手口を細かく再現することは、被害者の尊厳を傷つけ、模倣にもつながりかねないため、細部には踏み込まない。
被害女性はたまたまその道を歩いていただけだった。加害者たちと面識もなく、事件に巻き込まれる理由は何もない。「ネットで集まった犯人」という珍しさより先に、普通の日常を突然奪われた人がいたことを忘れてはいけない。
一人の通報から事件が明らかになった
事件翌日、三人のうち一人が警察へ電話をかけ、自分たちが起こした事件について話した。この通報をきっかけに被害女性が発見され、残る二人も逮捕された。捜査では供述だけでなく、車や奪われた品などが調べられ、三人の関与が裏づけられていった。
裁判では、それぞれの関与の程度や、事件後に自ら通報した事情などが個別に判断された。そのため三人に同じ刑が言い渡されたわけではない。うち一人については死刑が確定した。別の一人は、この事件とは別の強盗殺人事件でも裁かれている。
被害女性の母親は、事件後、厳しい処罰を求める署名活動を続けた。集まった署名は大きな社会的関心を示すものとなったが、量刑は世論だけで決まるものではなく、裁判所が証拠と各人の責任を分けて判断している。
「闇サイト」だけで説明しない
事件後は、匿名掲示板が犯罪者を集めたという説明が広がった。実際、三人が知り合う入口になったのは掲示板であり、運営していたサイトは事件後に閉鎖された。違法な情報や犯罪の勧誘を放置してよいのかという議論も強まった。
ただ、インターネットが自動的に人を犯罪へ向かわせたわけではない。三人は短い期間のうちに相談を重ね、自分たちの意思で計画し、実行した。道具のせいだけにすれば、個々の判断と責任が見えにくくなる。
ネット上では、被害女性が最後まで抵抗した様子や言葉が、感動的な物語のように繰り返されることがある。裁判で確認された範囲を超えて心情を作り足したり、最期の場面を見世物にしたりするべきではない。この事件を振り返るなら、匿名のつながりが犯罪に使われた事実と同時に、奪われた一人の日常と、残された家族の長い時間を中心に置きたい。
