奇怪千万からのお願い

このサイトの記事が面白かった、役に立ったと思って頂けたら、一つお願いがございます。
Amazonで何か買う予定があるとき、その前に下のボタンから入って頂いて買い物をしていただくと
サーバーの運営費と心霊スポットやパワースポットの取材費になります。

ここから入って買い物をすると、金額の数%が紹介料として私に入ります。
貴方様の支払いが増えることは一切ありません。買う物も何でも構いません。
記事をもっとたくさん増やしたいので、ご協力をお願いします。

当サイトではアマゾンアソシエイト以外のアフィリエイトは使用しません
(記事が見づらくなるから・・・)

エンジェルさま・キューピッドさま――学校を席巻した「安全なこっくりさん」たちの全史

儀式の作法――紙に何を書き、何を唱え、どう終わらせるのか

こっくりさん系の降霊術には、決まった「型」がある。地域や年代によって細部の違いこそあれ、骨組みは同じだ。道具は紙とコイン。最初に白い紙を一枚用意し、上部に鳥居の絵を描く。鳥居の左右に「はい」「いいえ」と書き、その下に五十音表をひらがなで並べ、0から9までの数字も書き添える。

参加者は二人以上。たいていは三人から五人程度で机を囲み、紙の中央、ちょうど鳥居のあたりに十円玉を置く。ここまでは、まあただの工作みたいなものだ。

全員が人差し指の腹を軽くコインに乗せる。代表者が目を閉じて「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください」と三回唱える。しばらくすると、誰も意図的に動かしていないはずのコインが自然と震え出す。やがて鳥居の位置からするすると滑り出し、「はい」の文字を指す。これが降霊の合図とされる。

そこから先は自由に質問を重ねていくのだが、肝心なのはここからだ。聞きたいことを聞き終えたら、必ずコインを鳥居の位置まで戻す。「こっくりさん、こっくりさん、ありがとうございました。どうぞお戻りください」と丁寧に告げなければならない。

この儀式を怠ったり、途中で指を離して席を立ってしまったりすると、呼び出した霊が体に憑いたまま帰らなくなる。これが定番の言い伝えだ。

特に「コインが鳥居に戻らない」「戻そうとしても勝手に別の文字を指し続ける」などの現象は、怪談の最大の見せ場になる。紙、コイン、呪文、送り返しの儀式。この四点セットが基本フォーマットで、後述するすべての派生ゲームの骨格になっている。

発祥の系譜――なぜ「安全なこっくりさん」が量産されたのか

こっくりさんそのものの起源は、西洋の「テーブル・ターニング」に遡るとされる。日本には明治期、伊豆下田沖に漂着した外国船の船員が持ち込んだという説が広く流布している。当初はテーブルの代わりに、米櫃(こめびつ)などの容器を代用したらしい。

それがこっくりこっくりと傾く様から、「こっくりさん」という名がついたとも語られる。江戸期からあった狐狗狸信仰と習合した、という見方もある。正確な出自は今も曖昧なままだ。

爆発的なブームが訪れたのは1970年前後だ。

皮切りは深夜ラジオでの話題。心霊研究家・中岡俊哉が1974年に著した『狐狗狸さんの秘密』がベストセラーとなった。楳図かずおの漫画『うしろの百太郎』に描かれた「こっくり殺人事件」のエピソードも、子どもたちの間で語り草になった。そこから発展したのが、全国の小中学校を巻き込む一大ブーム。ところがこの熱狂は長くは続かなかった。

こっくりさんをやった生徒について、報道が相次いだ。中身は「急に情緒不安定になった」「意識を失った」「恐怖のあまり過呼吸を起こした」というものだ。各地の教育委員会や学校が、次々に「コックリさん禁止令」を発令する事態になった。禁止されたからといって、子どもたちの興味が消えるはずもない。そりゃそうだよな。

発想は単純だ。本題はここからで、特に女子生徒たちの間で、いわば脱法的な交霊術が次々に考案されていった。「こっくりさんではない別の何か」を装ったものだ。名前を可愛らしいものに変え、鳥居をハートや花に描き替え、硬貨の代わりに鉛筆やシャープペンを使う。先生に見咎められても「これはこっくりさんじゃないから」と言い張れる建前を用意して、規制の網をすり抜けようとしたわけだ。

禁止が生んだ遊びだ。エンジェルさま、キューピッドさまをはじめとする無数のバリエーションは、こうした昭和の学校文化における「いたちごっこ」の産物として誕生した。

時期は1975年前後。関東を中心に広まったのがキューピッドさんだという。ほぼ同時期、関西方面ではエンゼルさんと呼ばれる文字盤方式が独自に発展していったとされる。口コミと転校生を媒介にして、全国へと拡散していったと考えられている。

キューピッドさま――恋占いに特化した「安全な霊」

キューピッドさま(キューピットさまとも表記される)は、数ある派生の中でもとりわけ有名な一派だ。基本の作法はこっくりさんとほぼ同じだが、決定的に異なるのは紙に描く図案だ。鳥居の代わりに、矢の刺さったハートマークを描く。五十音と数字はそのままに、呼びかけの言葉も「キューピッドさま、キューピッドさま、どうぞおいでください」と変わる。硬貨は十円玉のほか、五円玉を使う地域もあったという。

やり方はもうひとつある。大きなハートをひとつ描いた紙に、二人で一本の鉛筆を握る。目を閉じて呪文を唱えながら手を動かすと、やがて鉛筆が意思を持ったかのように円を描き始めるという。この「自動筆記」型も広く行われた。

名前からして甘い。呼び出すのは、ローマ神話の恋の神キューピッド。動物霊や得体の知れない霊を呼ぶこっくりさんに比べ、この設定は子どもたちに「安全そう」という心理的な免罪符を与えた。特に女子の間で、恋愛相談・友情相談の手段として熱狂的に支持された。

誰と誰が両想いか。好きな人は自分をどう思っているか。そうした質問を繰り返すうちに、次第に交霊ごっこの域を超えて、事件に発展したケースも語られている。名指しされた男子生徒を、無理やり巻き込むような事件だ。

エンジェルさま――文字盤と「エンジェルタイム」

エンジェルさま(エンゼルさま)は関西発祥説が有力で、アルファベットや五十音を書いた文字盤の上で行う方式が基本形とされる。答え方も変わっている。独自の応答方式を持つバリエーションも伝わっている。二人が向かい合って両手のひらを合わせ、質問を投げかける。答えがイエスなら手のひらが円を描くように開き、ノーなら一直線に押し開かれる。

変わり種はまだある。五十音表と質問を書いた紙、鉛筆を一緒に、ロッカーのような密閉された容器へ入れておく。教室がふと静まり返る「エンジェルタイム」と呼ばれる瞬間に、ロッカーの中から答えが返ってくる。そんな奇妙な派生ルールも、一部の学校で語り継がれていた。

名前の響きは天使だ。清らかなイメージを喚起するぶん、こっくりさんの持つ土着的な不気味さを払拭する効果があったとされる。これもまた「安全に見える交霊術」として、女子生徒の間に広まっていった。

守護霊さま――自分自身の過去と未来を尋ねる儀式

守護霊さまは、少し踏み込んだ内容を扱う派生だ。ひらがなを敷き詰めた紙の上で、複数人が一本のペンを一緒に握る。尋ねるのは、それぞれの背後に付いているとされる守護霊の名前や正体、過去世、これから起こる出来事。こっくりさんやキューピッドさまは「外部の霊」を招く。守護霊さまは最初から「自分に憑いている霊」を対象にするのが特徴で、恐怖よりも自己探求的な色合いが強い。

怖い話もちゃんとある。その分だけ、質問の仕方や態度を誤ると守護霊の機嫌を損ねるという。教室の電気が明滅する、机が小さく揺れる、誰もいない廊下から足音が聞こえる。そんな怪奇現象を引き起こす、という言い伝えが根強く残っている。

手順は省けない。終わらせ方も、他の派生と同じく厳格だ。必ず感謝の言葉とともに送り返す作法が求められた。

ハムスターさま――もっとも語られない、けれど確かに存在した派生

ここからは珍種だ。ハムスターさまは、キューピッドさまやエンジェルさまに比べて資料も証言も段違いに少ない。まさに「都市伝説の中の都市伝説」と呼べる存在だ。

断片的に伝わる話では、この霊に取り憑かれると頭の回転が鈍くなり、ぼんやりとして受け答えがちぐはぐになる。そんな実害めいた噂がまとわりついている。他の派生が「恋愛」や「自己探求」を扱うのに対し、ハムスターさまはどこか罰ゲーム的、あるいは仕返しの呪術としての性格を帯びている。そこが面白い。

特定の学校のローカルルールとして密かに語られていた形跡が濃く、全国的な統一された作法は確認できない。正体は霧の中だ。それでも、こっくりさん文化圏の周縁に確かに存在した派生だ。オカルト愛好者の間では、今も名前だけが独り歩きしている。

その他の兄弟たち――星の王子さま、ラブさま、森のシチュー屋さん

派生はまだまだある。これら主要な三、四種のほかにも、こっくりさん系の派生は数えきれないほど存在した。文字盤すら使わず、シャープペンシルを紙に押し当てたまま呼びかけると、ペン先が勝手に文字を書き始めるという「星の王子さま」。恋愛専門でキューピッドさまとほぼ同系統とされるのが、「ラブさま」。

笑うしかないネーミング。極めつけは、1983年頃に登場したとされる「森のシチュー屋さん」だ。当時人気だった即席シチューの商品名を、そのまま流用したものだ。企業名を冠することで、「ただの遊びだから怖くない」という言い訳を成立させようとした。その点が、いかにも昭和の子ども文化らしい発明だと考えられる。

無数のバリエーションが、同時多発的に生まれては消えていった。禁止令をかいくぐりたい子どもたちの創意工夫。友達同士で「秘密の遊び」を共有したいという承認欲求。その二つが、裏で複雑に絡み合っていたと考えられる。

目撃談・体験談集――教室に残された怪異の記録

ある地方都市の中学校で、代々語られている話がある。旧校舎が部活動の倉庫として使われるようになったころのことだ。女子部員たちが、用具室のロッカーからカタカタと音がするのに気づいた。誰かが悪戯で閉じ込められているのかと思い扉を開けると、そこには薄汚れた服を着た三十代くらいの女がうずくまるように収まっていた。

女は部員たちの顔を順番に見回すと、不気味な笑みを浮かべながら甲高い声で叫んだという。「死んだ!死んだ死んだ!二人とも死んだから」。悲鳴を上げて逃げ出した部員たちが教師を連れて戻ると、女の姿はどこにもなかった。もぬけの殻だ。ロッカーの奥には、古びた五十音表だけが残されていた。

そこには鉛筆で、質問がびっしりと書き込まれていたそうだ。「三組の佐々木くんと岡崎さんは付き合いますか」。いかにも往年のエンジェルさま特有の質問だ。ぞっとする話だよな。

次は鉛筆の話。キューピッドさまにまつわる体験談も根強い。ある投稿者は小学生の頃、班のメンバー数名で休日に集まった。B5ノートを破り取った紙に五十音とハートを描き、キューピッドさまを呼び出した。

ところが儀式を終えようとした瞬間、鉛筆が「いいえ」の文字の上でぐるぐると回り続け、いつまで経っても中央に戻らなかったという。

女子たちが泣きながら「また今度お呼びしますから」と懇願し続けて、ようやく鉛筆は止まった。話はそこで終わらない。それから数日、校庭の隅で木の枝を使い、再びキューピッドさまを呼び出そうとする女子たちの姿が目撃された。教室でも突発的に儀式が始まり、クラス全体が騒然となる騒ぎが続いた。

幕切れはあっけない。最終的に教師が紙と鉛筆を没収し「全部インチキだ」と一喝したことで、表向きは収束した。投稿者は三十年後の今も独身のままだ。「あれがキューピッドさまの呪いなのかどうかは、誰にも分からない」と結んでいる。

こっくりさんそのものにまつわる話も、もう一つある。広く知られているのが、小学一年生のクラスで流行した際の後日談だ。

運動神経が良く、昼休みは男子に混じってドッジボールをするような活発な女児。その子が、こっくりさんに参加した直後から一変してしまう。「お母さん、お母さん」と一日中泣き叫び、まるで別人のような様子になったため、心配した母親が付き添いで登校するほどの事態になった。

病院でも原因が分からず、両親は地元の由緒ある寺に連れていった。僧侶の見立てはこうだ。「何十年か前の水害で命を落とした子どもの霊が憑いている」。そう告げて、僧侶は経を読んだ。

その瞬間、目の前が光ったように感じたと本人は振り返っている。以後は何事もなく、卒業まで過ごせたという。

守護霊さまについても、ある地方の学校で語られる話がある。こっちも地味に怖い。

休み時間に数人でひらがなの紙を囲み、自分の守護霊の名前を尋ねる遊びに興じていたところ、突然教室の蛍光灯が一斉に明滅し始めた。慌てて紙をしまい、ペンを持っていた生徒が「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けると、光は元に戻った。

ところが、話は続く。その日以降、その生徒の机の周りだけ、ノートや教科書が勝手に床に落ちる現象が数週間続いた。そんな話が卒業アルバムの片隅に書き込まれていた、という噂も残っている。

締めくくりにもう一件。これは、キューピッドさまが恋愛以外の目的で暴走してしまった例として語られる話だ。

ある学級で、キューピッドさまが流行した。やがて霊自身が「誰と誰をくっつけるか」を指示するようになり、奇妙な「儀式」に発展した。名指しされた男子生徒が、休み時間のたびに窓際に一人で立たされ続ける。当の男子生徒は、何が起きているのか理解できないまま従わされた。周囲の女子たちは「キューピッドさまの言う通りにしないと祟られる」と本気で信じ込んでいたという。

結局この一件は担任の知るところとなり、学級会で厳重注意されて収束した。当事者だった女子生徒は、大人になった今もこの出来事を「一番怖かった記憶」として語っている。

掲示板・SNSでの反応と考察勢の見立て

2ちゃんねる・5ちゃんねるのオカルト板や、おーぷん2ちゃんねるの怖い話スレッド。そこでもキューピッドさまやエンジェルさまは、折に触れて話題に上るテーマのひとつだ。「うちの学校でもやってた」「地域によって呼び方が全然違って驚いた」。そんな書き込みが定期的に立つ。

ニコニコ大百科やピクシブ百科事典のこっくりさん関連項目でも、派生が「亜種」として一覧化されている。キューピッドさま・エンジェルさま・星の王子さまなどだ。まるで標本の目録だ。オカルト愛好者の間では、もはや一種の民俗学的な収集対象として扱われている節がある。

では、コインはなぜ動くのか。考察勢の間で有力なのは、これらの現象の大部分を「不覚筋動(ふかくきんどう)」で説明する見方だ。参加者自身も気づかないうちに、指や手が微細に動いてしまう生理現象のことだ。これに集団心理・自己暗示が組み合わさって起きている、という説明になる。

理屈と恐怖は別物だ。いくら科学的な説明が用意されようとも、それだけでは拭えないものがある。コインや鉛筆が実際に「戻らなかった」瞬間の、恐怖体験だ。SNS上では毎年夏になると、「学校の怪談」特集とともにこれらの派生ゲームの思い出話がバズる。そんなサイクルが繰り返されている。

「終わらせ方を間違えると」――憑依伝説の恐怖

こっくりさん系の降霊術に共通して付きまとう最大の恐怖は、遊びそのものよりも「正しく終わらせられなかったとき」に集中している。問題は幕引きだ。

コインや鉛筆が定位置に戻らない。送り返しの言葉を、最後まで言い切れなかった。参加者の誰かが、途中で指を離してしまった。こうした「儀式の失敗」が起きると、呼び出した存在が体に取り憑いたまま居座ってしまう。これが各派生に共通する言い伝えだ。

取り憑かれた者は、情緒が不安定になる。うわごとのように、知らない言葉を口走る。家に帰ってからも、誰もいない部屋で返事をするような素振りを見せる。そんな症状が語られる。最終的にはお祓いや読経によってようやく解放される、という結末が定番になっている。

これらの噂は、学校という閉じたコミュニティの中で代々語られてきた。「途中でやめてはいけない」「最後まで責任を持って締めくくる」。単なる脅しにとどまらず、そんな一種の作法・礼儀を子どもたちに刷り込む役割も果たしていたのだろう。よくできた仕組みだ。

念のため断っておく。本稿は、こうした儀式の実行を勧めるものでは一切ない。あくまで学校という舞台で代々語られてきた、怪異譚・都市伝説の記録として紹介するものだ。

エンジェルさま、キューピッドさま、守護霊さま、ハムスターさま。こうした「学校版こっくりさん」は、単なる遊びの亜種というより、いわば文化的な抵抗運動の産物だったと考えられる。1970年代のコックリさん禁止令という社会的な締め付けに対し、子どもたち、とりわけ女子生徒たちが知恵を絞って生み出したものだ。

名前を可愛らしく変え、鳥居をハートや花に描き替え、硬貨を鉛筆に替える。そうして規制の網をすり抜けながらも、根底にある欲求は変わらなかった。「異界と繋がりたい」「答えの出ない不安を誰かに尋ねたい」という、子どもらしい欲求だ。

根っこは同じだ。だからこそ、これらのゲームには、こっくりさんと変わらない濃厚な怪異性が同居している。恋占いという可愛らしい表層の下にあるのは、コインが戻らない恐怖、取り憑かれる恐怖だ。

派生ごとに異なる作法、地域ごとに異なる呼び方、学校ごとに異なる体験談。その多様性こそが、「学校の怪談」というジャンルの豊かさそのものだ。令和の今も、夏になるとどこかの教室で誰かが古い五十音表を思い出し、語り直しているのかもしれない。

タイトルとURLをコピーしました