カクヨム掲載「心霊体験談短編集」の導入記事です。実話・体験談・聞き書きをもとに、読み物として脚色を加えた怪談として扱い、全文転載はせず冒頭のみ掲載しています。

この話について
『しまこ』 これは怪談ではない。 俺が実際に体験した話だ。 脚色はしていない。順番も変えていない。ただ、起きたことをそのまま書く。信じるか信じないかは読んだ人に任せる。 ただし、一つだけ先に言っておく。 この話を最後まで読んだとき、あなたの部屋の温度が少しだけ下がったように感じたら。 それは気のせいだと思ってくれ。 た…

冒頭抜粋
『しまこ』

これは怪談ではない。
俺が実際に体験した話だ。

脚色はしていない。順番も変えていない。ただ、起きたことをそのまま書く。信じるか信じないかは読んだ人に任せる。
ただし、一つだけ先に言っておく。
この話を最後まで読んだとき、あなたの部屋の温度が少しだけ下がったように感じたら。
それは気のせいだと思ってくれ。
たぶん、気のせいだ。

一
茨城県の山間部に、その家はあった。

何でも屋の仲間、タツの親戚筋にあたる旧家で、当主が三年前に亡くなってからずっと空き家になっていたらしい。ようやく土地を売る話がまとまり、更地にするために建物を解体することになった。
解体は俺たちの得意分野だ。ユンボ、ユニック、ショベル。現場系の資格は一通り持っている。金は取らない。交通費と飯代だけもらって、あとは人助けだ。理由は長くなるから省く。ただ、俺には人助けをしなければならない事情がある。

七月の頭だった。
梅雨の合間の晴れ日で、朝から蒸し暑かった。蝉はまだ本格的には鳴いていなかったが、山の木々からじわじわと湿気が滲み出して、空気そのものが重かった。
旧家は築百年は超えていた。平屋に増築を重ねた歪な構造で、屋根瓦は苔むし、柱は傾いている。玄関脇に枯れた南天の木があり、その根元に小さな地蔵が埋もれるように立っていた。
首が欠けていた。

タツと、もう一人の仲間のケンジ。三人で作業に入った。
壁を崩し、柱を抜き、畳を剥がす。押入れの奥から古い位牌が出てきたり、天井裏から鳥の巣が落ちてきたりするのはいつものことだ。旧家の解体をやっていると、だい…


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