カクヨム掲載「心霊体験談短編集」の導入記事です。実話・体験談・聞き書きをもとに、読み物として脚色を加えた怪談として扱い、全文転載はせず冒頭のみ掲載しています。

この話について
後ろの女 この話は、すべて実話だ。 信じるも信じないも、読んでくれたあなた次第だ。ただし一つだけ約束してほしい。読み終えたあとに、自分の背後を振り返らないこと。 いや、振り返ってもいい。 ただ、そこに何もいないと思えるなら。 人によっては気分が悪くなる話もある。苦手な人は、今ここで引き返すことを強く勧める。 一、 俺が…
冒頭抜粋
後ろの女

この話は、すべて実話だ。

信じるも信じないも、読んでくれたあなた次第だ。ただし一つだけ約束してほしい。読み終えたあとに、自分の背後を振り返らないこと。
いや、振り返ってもいい。
ただ、そこに何もいないと思えるなら。

人によっては気分が悪くなる話もある。苦手な人は、今ここで引き返すことを強く勧める。
一、

俺がまだ高校一年のとき、友人のTに誘われて新宿で女の子二人と会った。

当時、mixiという巨大SNSが流行っていた。完全に出会い系だった。未成年は本来やっちゃいけなかったが、同年代がごろごろいた時代だ。Tがそのmixiにハマっていて、都内の同い年の女子高生二人と会う約束をした。相手が二人だから来ないかと誘われたのだ。
正直、気乗りはしなかった。

俺には親がいない。生まれてすぐ捨てられ、十八まで施設で育った。これはネタでも何でもない事実だ。簡単に言うと、捨て子だ。異性との出会いがどうこうなんて余裕はなく、毎日を自分の力だけで生き延びるので精一杯だった。自分の身の回りは全部自分でやらなければいけない。誰も助けてくれる人がいないのだから、そういう意味で手一杯だった。
だがTはどうしてもと言う。一週間分の昼飯を奢ると提案された。俺は飯に弱い。施設育ちの人間にとって、食事の確保は本能に近い。弱いところを的確に突かれて応じてしまった。

数日後、新宿でその女子高生二人と会うことになった。はっきり言うが、気乗りはしない。本当に嫌々だった。

時間ちょうどに合流する。普通にかわいい二人組だった。だが一人の女の子が俺…

新着の怪談
毎朝、家の前の桜を数えてから仕事に出る。川沿いの道に一列に植わった、十二本だ。古い借家に一人で住んで、もう十年になる。端の一本は、その借家の…
わしは今年で七十四になる。菰野の小さいタクシー会社で、夕方の番をしとる。四日市の工場をやめてから乗りはじめたで、もう三十年あまりや。夕方の持…
十月の半ばの、金曜の夜だった。拓海の仕事が長引いて、名古屋を出たのは九時半を回ってからだ。行き先は、京都の清滝。愛宕山の登り口にある、川沿い…
六月の終わりは、工場の中まで湿っている。床のコンクリートが汗をかいて、長靴の底がきゅっと鳴った。グリスと雨の匂いが、朝からこもったままだ。樋…
ばあちゃんは、人の話を右の耳で聞いた。誰かに話しかけられると、首を少し右にかしげる。左の耳は、子どものころから遠かったらしい。「左は、雄別に…


コメント