カクヨム掲載「心霊体験談短編集」の導入記事です。実話・体験談・聞き書きをもとに、読み物として脚色を加えた怪談として扱い、全文転載はせず冒頭のみ掲載しています。
この話について
誰も予約していない古民家 これは二〇二〇年の秋の話だ。 当時の世間はコロナ禍の真っ只中で、どこへ行くにもマスク、マスク、マスク。外出自粛で人々のストレスは限界に達していた。 その反動だろう。アウトドアブームが爆発的に広がった。キャンプ場はどこも満杯。焚き火台は品切れ。密を避けるという大義名分のもと、みんなこぞって山や川…
冒頭抜粋
誰も予約していない古民家
これは二〇二〇年の秋の話だ。
当時の世間はコロナ禍の真っ只中で、どこへ行くにもマスク、マスク、マスク。外出自粛で人々のストレスは限界に達していた。
その反動だろう。アウトドアブームが爆発的に広がった。キャンプ場はどこも満杯。焚き火台は品切れ。密を避けるという大義名分のもと、みんなこぞって山や川に繰り出していた。
俺の名前は島田。当時二十六歳。千葉に住んで、心霊スポットの撮影動画をYouTubeに投稿していた。
チャンネル登録者はまだ4桁で、収益なんてほぼゼロ。
それでも続けていたのは、単純にこの趣味が好きだったからだ。暗闇の中に一人で立って、見えないものの気配を探る。その緊張感が、離婚して以来ぽっかり空いた胸の穴を、ほんの少しだけ埋めてくれていた。
京都に住んでいた結婚時代が終わり、千葉にきて3年。日常の大半はカブに跨がって一人で走り回る生活だった。
ある日、生配信の企画を考えていた。
コロナ禍のステイホーム需要に乗って、ここのところ視聴者が少しずつ増えていた。アウトドア系の配信が伸びている。ならば心霊と掛け合わせたら面白いんじゃないか。
古民家を一棟貸し切って、囲炉裏料理をしながら一泊配信。焚き火もやる。釣りもできたら最高だ。
問題は場所だった。
どこの貸し切り古民家も予約で埋まっている。ブームの波は古民家にまで押し寄せていて、三ヶ月先まで空きがない物件ばかり。
諦めかけていた時、配信のリスナーが一件の情報を持ってきた。
某県の山間部にある古民家。名前は伏せる。今も営業しているからだ。
予約サイトを開いて、…


コメント