- 塗りの位牌は、目を開いてもらうまでただの木の札
- 菩提寺に電話して、四十九日と一緒にやるか決める
- 本位牌は法要の三週間前までに仏具店へ頼む
- 宗派ごとの呼び名と供え方を寺に確かめる
- お布施の包みは、開眼だけか四十九日と一緒かで変える
- 仏壇を掃除して、五供と海山里の物を並べる
- 当日の服と数珠、寺へ持って行く物を揃える
- 住職を迎えて、開眼の読経と焼香を受ける
- 焼香の回数と、合掌で唱える名号を宗派ごとに揃える
- 用済みの白木位牌は寺に預けてお焚き上げにする
- 本位牌が四十九日に間に合わないときは、開眼だけ日を改める
- 浄土真宗は魂入れの代わりに入仏式を頼む
- 引っ越しや修理のときは、閉眼してから動かす
- 仏壇を買い替える日は、閉眼と搬出と開眼を一日にまとめる
- 閉眼の当日は扉を開けて供え物をし、読経のあとで中を空ける
- 閉眼のお布施は白の封筒に御布施と書く
- 古い位牌を一つに寄せるときは閉眼してから焚き上げる
- 神道の家は、遷霊祭で霊璽に移して五十日祭で祖霊舎へ
- 霊璽や祖霊舎を手放すときは、神社に御霊抜きを頼む
- やらないと決めておくこと
塗りの位牌は、目を開いてもらうまでただの木の札
仏具店の棚に並ぶ黒塗りの位牌は、買ってきただけではまだ飾りの札にすぎない。そう考えるのが多くの宗派の立場だった。形は立派でも、まだ中身が入っていない。僧に経をあげてもらい、仏や故人の魂を迎え入れてはじめて、手を合わせる相手になる。これを開眼供養と呼ぶ。
呼び名は土地や宗派でばらばらで、魂入れ、お性根入れ、精入れ、ご心入れ、仏壇開きと、どれも同じ儀式を指している。天平勝宝四年の東大寺の大仏開眼では、インドから来た僧の菩提僊那が筆を執り、大仏の目を描き入れた。開眼という言葉は、この目を開く所作から来ている。
逆に、位牌や仏壇を動かしたり手放したりする前には、入れた魂をいったん抜く。こっちは閉眼供養、魂抜き、お性根抜きと呼ばれる。入れたら抜く。この対になった段取りを、寺に頼む側の目線で順に追っていく。頼む相手は菩提寺の住職。
菩提寺に電話して、四十九日と一緒にやるか決める
いちばん多いのは、四十九日の法要に合わせて本位牌の開眼をしてもらう形だ。仏式では亡くなってから四十九日で来世が決まるとされ、この日を忌明けとして白木の位牌から本位牌へ魂を移す。仏具店の解説も、ほぼ全部がこの時期を挙げていた。忌明けと開眼の同時進行。
電話では、四十九日の法要の日取りと一緒に、本位牌の開眼もお願いしたいとはっきり伝える。法要を寺の本堂でやるのか、自宅に来てもらうのか、この時点で決めておく。自宅なら、仏壇がもう届いているかどうかも話しておくと話が早い。ここは大事。
新しく仏壇を買ったとき、一周忌に合わせて本尊を迎えるときも、同じように菩提寺へ頼む。法要の予定が無いなら、開眼だけの日を取ってもらえばいい。仏滅や友引を気にする家もあるけれど、寺の都合と家族の集まれる日を優先して決めるのが普通だった。
寺の側も年末や彼岸、お盆の前は法要の予定が詰まっていて、希望の日が取れないことが珍しくないようだ。電話は早いほどいい。
菩提寺が無い家は、近くの同じ宗派の寺に相談するか、葬儀をした葬儀社や、位牌を買った仏壇店に寺を紹介してもらう。仏壇店が僧侶の手配まで代行している例もある。どこに頼むにしても、宗派だけは先に確かめておく。宗派が違えば段取りも違った。
本位牌は法要の三週間前までに仏具店へ頼む
本位牌は、文字を彫ったり書いたりするのに一、二週間はかかると仏具店は案内している。四十九日に間に合わせるなら、二、三週間前には注文を済ませておきたい。お盆や年末の前は店が混むので、もう少し余裕を見ておく。早めの注文が無難。
注文には、葬儀で使った白木位牌を店へ持っていくか、写真に撮って見せる。表には戒名、裏には俗名と亡くなった年月日、行年を入れるのが一般的な形だ。戒名の字は一字でも違うと困るので、寺から受け取った戒名の紙と突き合わせて校正を見る。校正を出す店なら、必ず目を通す。
位牌の形や大きさは、仏壇の段と、先に祀ってある先祖の位牌に合わせる。先祖の位牌より目立たない大きさに揃える家が多いらしい。すでに位牌がたくさん並んでいる家なら、札を何枚も中に納める繰り出し位牌にまとめる手もある。
宗派ごとの呼び名と供え方を寺に確かめる
同じ開眼でも、宗派ごとに呼び名が違う。仏具店の宗派別の解説では、日蓮宗は精入れ、曹洞宗は開眼法要や遷座法要と呼んでいた。天台宗は開眼法要、精入れ、仏壇開きのどれでも通じる。臨済宗はご心入れや精入れ、真言宗は開眼供養。電話で頼むときは、この寺の言い方に合わせると話が通りやすい。
供え物にも差がある。曹洞宗は洒水器に水を張り、洒水枝で水を注ぐ作法があって、正式には献茶湯としてお茶と砂糖湯を供えるそうだ。天台宗は花と朱のろうそく、線香に、上用饅頭、米、酒、果物、海と山と里の幸を並べる形を挙げていた。
臨済宗は花一対に線香、お湯か水、お茶、菓子や果物と、わりあい簡素になる。それで十分。どこまで揃えるかは寺によって本当に違う。電話の最後に、仏壇に何を用意しておけばいいかを一言聞いておくのが確実だった。
お布施の包みは、開眼だけか四十九日と一緒かで変える
開眼は、魂を迎える祝い事として扱われる。開眼だけを頼むなら、紅白の水引の袋か、白い無地の封筒に御布施と書く。四十九日の法要と同じ日なら、弔事の側に合わせる。白黒の結び切りか白無地の封筒に、御布施か入魂御礼と書く形になる。
仏具店の解説では、法要とは別に開眼の分を紅白で包み、法要の分を白で包んで二つ渡す作法も紹介していた。地域で違いが大きいところなので、迷ったら寺に聞いてかまわない。聞かれて困る寺はまず無いはず。
表書きは濃い墨で書く。香典に使う薄墨はここでは使わないと、どの解説も念を押していた。筆ペンでも十分。下半分に家の名字か施主の名前を書き、中袋には金参萬円也のように旧字の漢数字で金額を入れる。
額の目安は、開眼の単独で一万から五万円ほどと書く解説が多かった。幅は広め。四十九日の読経と合わせるなら三万から五万円という数字もある。自宅まで来てもらうなら御車代を五千から一万円、会食に出ない住職へは御膳料を同じくらい、別の封筒で用意する。
仏壇を掃除して、五供と海山里の物を並べる
前の日までに仏壇の中を拭き、仏具を磨いておく。本位牌は、法要の直前まで箱に入れておき、埃がかからないよう仏壇の下の段か脇の机に置いておく家が多い。当日になったら箱から出して、仏壇の中の、先祖の位牌の並びに空けた場所の前に置いておく。祀る場所そのものは住職が決めることもあるので、最後の位置は当日に聞けばいい。
供えるのは、線香、ろうそく、花、水、ご飯の五供が基本になる。開眼は祝い事なので、ろうそくは朱色を立てる家が多い。仏具店の解説では、これに昆布やわかめの海の物、しいたけの山の物、人参やキャベツの里の物を加える例を挙げていた。
果物や餅、赤飯を供える家もある。餅は紅白が多い。数珠は参列する人数分を用意して、住職が座る前には座布団を一枚、仏壇の正面に敷いておく。家族は後ろ。これで支度は終わり。
当日の服と数珠、寺へ持って行く物を揃える
服は、四十九日と一緒の日なら喪服にする。開眼だけの日は祝い事の扱いなので、ダークスーツくらいの落ち着いた服で足りると仏壇店の解説は書いていた。どちらの日も数珠は持つ。数珠は一人一連。
法要を寺の本堂でやるなら、持ち物が増える。本位牌は箱に入れたまま風呂敷に包み、白木位牌も一緒に包んで持って行く。お布施は袱紗に包み、御供物や供花を頼まれていればそれも持つ。
寺に着いたら、受付か庫裏で本位牌と白木位牌を預ける。本堂の須弥壇の前に並べるのは寺の人がやってくれるので、施主は案内された席で待つ。終わったら本位牌だけを箱に戻して受け取り、白木位牌は寺に残していく。
帰り道は、本位牌を膝の上か座席に置き、床や足元に置かない。家に着いたらすぐ箱から出し、仏壇の中の住職に言われた場所へ祀る。その日の夜は、ろうそくと線香を上げて手を合わせる家が多い。
住職を迎えて、開眼の読経と焼香を受ける
住職が来たら仏壇の前へ案内し、お茶を出して、始める前か終わった後にお布施を渡す。袱紗から出した袋を切手盆か名刺盆にのせ、表書きが住職から読める向きに回して差し出す。盆が無ければ、畳んだ袱紗の上にのせて渡せばいい。袋をじかに手渡すのは避けたいところ。
読経が始まったら、家族は後ろで合掌して静かに聞く。住職は経を読みながら、本位牌や本尊に魂を迎える所作をする。宗派ごとに経も手順も違うけれど、家族は住職の後ろで待っていればいいので、特別な作法を覚えていく必要は無い。
住職から焼香をどうぞと声がかかったら、施主から順に前へ出る。一人ずつ。四十九日と一緒の日は、仏具店の解説どおりなら開眼の読経と焼香が先になる。そのあとで、ろうそくを朱から白に替えて、法要のほうの読経に移るそうだ。
終わったら、住職に本位牌の置き場所を確かめてから片づける。会食の席があれば住職を上座に案内し、出ないと言われたら御膳料を渡して見送る。
焼香の回数と、合掌で唱える名号を宗派ごとに揃える
焼香は宗派ごとに回数が違う。仏具店や寺の案内では、浄土真宗本願寺派は一回で、香を額に押しいただかない。真宗大谷派は二回、曹洞宗は二回で、一回目だけ押しいただく。真言宗は三回とする案内が多かった。
分からなければ、住職のやり方をよく見て真似すればいい。回数を間違えたから開眼が無効になる、なんて話はどの寺の案内にも無かった。気持ちのほうが先。
合掌したら、宗派の名号か題目を小さく一度か三度唱える。浄土宗と浄土真宗は南無阿弥陀仏で、読みはなむあみだぶつ、阿弥陀仏に身を任せますという意味になる。日蓮宗は南無妙法蓮華経で、なむみょうほうれんげきょう、法華経に帰依しますという意味だ。
曹洞宗と臨済宗は南無釈迦牟尼仏、なむしゃかむにぶつと唱える。真言宗は南無大師遍照金剛、なむだいしへんじょうこんごうで、弘法大師に帰依するという言葉になる。唱えるのは開眼が済んで焼香するとき。
用済みの白木位牌は寺に預けてお焚き上げにする
葬儀から四十九日まで使った白木位牌は、本位牌に魂を移したところで役目を終える。それまでは仮の位牌だった。仏具店の解説では、白木位牌は僧侶に供養してもらったうえでお焚き上げにする流れが一般的だと書いていた。
寺で法要をするなら、本位牌と一緒に白木位牌も持って行く。終わったら住職に渡し、そのまま寺でお焚き上げに回してもらう。自宅でやった場合も、住職に持ち帰ってもらえるか、その場で相談しておくといい。
燃えるごみに出す家は、正直あまり聞かない。寺が引き取らない場合は、仏壇店や位牌店のお焚き上げの受付に回す手もある。本位牌を買った店が、白木位牌を引き取って提携寺院で焚き上げている例もあった。
仏壇の解説でも、白木位牌は四十九日の法要を終えたところで魂抜きをして、お焚き上げで処分する流れとして紹介されていた。白木位牌をいつまでも仏壇に並べておくのは避ける。魂を移した後は空の札なので、本位牌と二つ並べる意味が無い。
本位牌が四十九日に間に合わないときは、開眼だけ日を改める
文字入れが遅れて、本位牌が法要の日に届かないこともある。そうなったら、四十九日は白木位牌のまま法要を済ませ、本位牌が届いてから開眼だけ別の日に頼めばいい。寺にはそのまま事情を話す。よくある話だった。
その間、白木位牌は仏壇に祀ったままにしておく。本位牌が届いたら住職に連絡して日を取り、当日は白木位牌と本位牌を並べて置いておく。開眼が済んだら、白木位牌は前の節と同じように寺へ預ける。
逆に、四十九日より前に本位牌を仏壇へ入れてしまうのは避ける。開眼の済んでいない本位牌は、まだ木の札。届いたら箱に入れたまま、仏壇の脇か下の段に置いて待たせておく。
菩提寺が遠くて住職に来てもらえないときは、菩提寺に電話して、近くの同じ宗派の寺を紹介してもらえないか聞く。黙って別の寺に頼むと、あとで菩提寺と揉める種になる。一言断っておくだけで、話はずっと穏やかに進む。
浄土真宗は魂入れの代わりに入仏式を頼む
浄土真宗では、話がまるごと変わる。本願寺派の寺の案内では、入仏式はお性根や魂を入れる儀式ではないとはっきり書いていた。本尊を迎え、仏縁をよろこび、感謝の生活を送る決意を表す法要だという。目を開く儀式とは別物。
呼び名は、本願寺派が入仏式か入仏法要、大谷派が御移徙だ。仏壇の開眼にあたる法要はこれになる。古い仏壇から新しい仏壇へ本尊を移すときは遷座法要、あるいは遷仏法要と呼ぶ。
位牌も使わない。東京の本願寺派の寺は、位牌は霊魂が宿るという仏教の教えに合わない考えに基づくので用いないと答えていた。故人の法名は、仏壇の脇に掛ける法名軸か、過去帳に書いて残す。
葬儀で白木の位牌が出た家は、中陰が明けたら法名を過去帳か法名軸に移し、白木は寺に相談して納めるといい。
お布施の包み方も違う。本願寺派なら紅白の水引で入仏式御礼、大谷派なら紅白で御移徙御礼と書く。これとは別に、御布施を無地の水引で包むのが正式だと仏具店の宗派別の解説は書いていた。袋は二つ。
供え方にも決まりがある。線香は立てずに折って火をつけ、土香炉に寝かせる。ろうそくは朱、あるいは金を使い、華束と呼ぶ白い小餅か紅白の小餅を二重か三重に積む。大谷派は白い小餅と決めているらしい。
引っ越しや修理のときは、閉眼してから動かす
仏壇を家の外へ運び出すときは、先に閉眼供養をしてもらう。引っ越しなら出す前に閉眼、新しい家に据えたあとで開眼、という二段になる。修理に出すときも、預ける前に閉眼、戻ってきたら開眼と同じ段取りを踏む。仏壇店の解説もこの順で書いていた。
同じ家の中で部屋を移すだけなら、基本的には要らないと書く解説が多い。とはいえ判断は宗派と寺で分かれるので、動かす前に一本電話を入れておけば安心だ。
浄土真宗の家は、動かす前に遷座法要か遷仏法要を頼む。修復や引っ越しを終えた本尊を元の場所に戻すときは、あらためて入仏式を勤める。
真宗興正派のある寺の住職は、自分たちには仏さまの目を開かせたり閉じさせたり、魂を入れたり出したりする力は無いと書いていた。遷座法要は、先祖を通して仏の教えに出会う場所として仏壇を使わせてもらったことに感謝し、手を合わせるための法要だという。
この寺では、仏壇を手放す家の本尊が絵像なら寺で預かれると案内していた。新しい仏壇を用意するなら、位牌はそのまま持って行けばいいとも書いてあった。本尊を寺へ預けるかどうかは、遷座法要を頼む電話で一緒に相談しておくと手戻りが無い。
仏壇を買い替える日は、閉眼と搬出と開眼を一日にまとめる
買い替えのときは、古い仏壇で閉眼、中身を出して新しい仏壇へ移し、そこで開眼という順になる。住職に同じ日に両方をお願いすれば一度の訪問で済む。仏壇店と日取りを合わせて、古い仏壇の引き取りと新しい仏壇の納品を同じ日にしておくと、段取りがぐっと楽になる。
閉眼の読経が済んだら、本尊と位牌、過去帳を先に取り出し、白い布を敷いた机の上へいったん移す。引き出しの中身も全部出して、古い書き付け、お守り、写真、ときには通帳や証書が紛れていないかを確かめる。浄土真宗の寺の住職も、処分の前に仏壇の中の書類や物を整理するよう書いていた。
新しい仏壇が届いたら、置き場所に据えて扉の開け閉めと水平を確かめ、本尊と位牌を住職に言われた段へ納める。開眼の読経はそのあと。焼香の順は開眼の日と同じで、施主から家族へと回していけばいい。
古い仏壇は、仏壇店の引き取りに出すのがいちばん手間が少ない。この寺の住職は、仏壇屋に引き取ってもらう方法を勧めていて、費用はだいたい一万円ほどからと書いていた。閉眼を済ませた仏壇を、寺でお焚き上げしてくれる業者もある。どの業者も、閉眼を済ませてから引き取る流れを示していた。
閉眼の当日は扉を開けて供え物をし、読経のあとで中を空ける
閉眼の日も、仏壇の中はふだんどおりに整えておく。手は抜かない。扉を開け、ろうそくと線香、花、水、ご飯を供える。祝い事ではないので、ろうそくは白。閉眼の場合の準備として仏具店が挙げていたのは、お布施、供花と供物、ろうそくと線香、それに参列する人全員の数珠だった。
住職が来たら、開眼の日と同じように仏壇の前へ案内する。読経のあいだ家族は後ろで合掌し、声がかかったら順に焼香する。仏壇の引き取りを業者に頼んだ場合も、段取りはほぼ同じ。僧侶が一人で家に来て、その場で読経とお性根抜きを済ませる。そのあとでスタッフが梱包と搬出に入る流れを、ある引き取り会社は案内していた。
読経が終わったら、供え物を下げ、ろうそくと線香の火を消す。本尊と位牌を出すのはこのあと。仏具は一つずつ新聞紙で包み、残す物と手放す物を分けて箱に入れる。
閉眼のお布施は白の封筒に御布施と書く
閉眼は祝い事ではないので、紅白の水引は使わない。白無地の封筒か、白黒の結び切りに御布施と書く。これも濃い墨。中袋の金額は開眼と同じく旧字の漢数字にする。
金額の目安は、一般に三万から五万円ほどとする解説がある。三万から十万円と幅を持たせた案内もあった。先の浄土真宗の寺は、どの法要もお布施は包んだ分だけで結構だと書いていた。
閉眼の日に寺との付き合いを終える、いわゆる離檀まで一緒に話すと、別に費用がかかることもある。仏壇を手放すだけなのか、墓や檀家もやめるのか。ここは電話の段階で分けて話しておく。
古い位牌を一つに寄せるときは閉眼してから焚き上げる
先祖の位牌が増えて仏壇に入らなくなったら、三十三回忌のような長い年忌の区切りで、位牌を整理する家が多い。古い位牌は閉眼してもらい、先祖代々の位牌か、繰り出し位牌にまとめる。
手順は、年忌法要を頼むときに一緒に整理したいと伝えるだけでいい。当日は閉眼の読経のあとで、まとめ先の位牌の開眼をしてもらう。閉眼した古い位牌は、寺に預けるか仏壇店を通してお焚き上げに出す。
繰り出し位牌に移すときは、先祖一人ずつの戒名と俗名、没年月日を札板に一枚ずつ入れてもらう。仏具店に古い位牌を見せて文字を写してもらい、札板が揃ったら年忌法要の日に持って行く。札の重ね順は寺や仏具店で聞いておく。閉眼と開眼は、法要の同じ日に続けて頼むと一度で済んだ。
家を継ぐ人がいなくなって位牌を手放すときも、同じく閉眼してから焚き上げる。寺によっては位牌を預かって永代で供養する形を用意しているので、手放す前に聞いてみるといい。
神道の家は、遷霊祭で霊璽に移して五十日祭で祖霊舎へ
神道で位牌にあたるのは霊璽だ。白木の角柱で、鞘と呼ぶ覆いがかぶせてあり、御霊が見えないように祀る。表には霊号を書き、大人の男性なら大人命、大人の女性なら刀自命のように、名前の下に命の字を添える。
霊璽は神具店か、葬儀をお願いした神社で用意してもらう。霊号は神職が書くのが普通だった。仏式でいう魂入れにあたるのが、通夜にあたる遷霊祭で、故人の御霊を霊璽に遷して留める祭儀になる。
遷霊祭のあとの霊璽は、仮の御霊舎に安置する。翌日祭のあとは十日ごとに十日祭、二十日祭と進み、五十日祭で忌明けになる。福岡県神社庁の解説では、五十日祭を終えたら家中をお祓いすると書いていた。そのあとの合祀祭で、故人の御霊を仮御霊舎から祖先を祀る御霊舎へ遷す。
祖霊舎は神棚とは別に、白木の小さな社を用意して祀る。神棚まつりと同じく毎日欠かさず拝むのが基本だと、長野県の穂高神社は案内していた。
神職へのお礼の表書きは玉串料。葬儀のときは御霊前でもいい。年祭は一年、三年、五年、十年と進み、そのあとは十年ごとに行う。福岡県神社庁は、五十年祭を節目に祖先の神と一体にする合祀をすると書いていた。
霊璽や祖霊舎を手放すときは、神社に御霊抜きを頼む
神道にも魂抜きにあたる神事があって、御霊抜きと呼ぶ。祖霊舎を買い替えたり、家を継ぐ人がいなくなったりしたら、霊号を授かった神社か、ふだん祭祀を頼んでいる神社に相談する。
祖霊舎の本体は神具店が引き取ってくれるけれど、霊璽はここに入らない。ある神具店は、霊璽や御札、御守りは引き取れないので神社へ納めるようはっきり断っていた。祖霊舎を出す前に、霊璽だけは別にして神社へ持って行く。御霊抜きの祭儀を家でやるのか、神社に霊璽を持ち込むのかは、神社ごとに対応が違うので電話で先に確かめておくと当日に慌てずに済む。
神社への初穂料は五千円からとする解説がある。霊璽をお焚き上げする時期は、三十年祭か五十年祭の弔い上げのあとが多い。神道ではこの二つの年祭を、最後の供養にあたる区切りとして扱ってきたと解説は書いていた。近ごろはもっと早い節目で済ませる家も増えているそうだ。
やらないと決めておくこと
開眼の済んでいない位牌を、そのまま仏壇に祀って済ませない。閉眼の済んでいない仏壇を、粗大ごみの日に出さない。引っ越し業者にいきなり運び出しを任せるのも、閉眼を頼んでからにしておく。どちらも寺か仏壇店に一言相談すれば、そう大きな手間にはならない。
白木位牌の文字を自分で削ったり、本位牌へ書き写したりもしない。素人仕事は禁物。戒名は寺が付けたものなので、字の確認は寺か仏具店と一緒にやる。
神道の霊璽は鞘を外して中をのぞかない。御霊が見えないようにするための覆いなので、そのままの形で神社へ持って行く。宗派が分からない家は、仏壇の本尊や位牌の戒名、葬儀の記録から菩提寺を探し、そこから話を始めればいい。
