- ぬさと打撒、御殿の四隅に撒いた米
- 半紙を四つに切って二十枚重ねる
- 横に切ってから縦に裁つ
- 精麻を裂いて紙と混ぜる
- 洗米を干して、塩と酒を一合ずつ量る
- 器を左手に、窓を一か所開けて回る
- 六月と十二月の晦日に合わせる家もある
- 手と口を清め、自分の体を左右左で祓う
- 家の中心で祓詞を一回読む
- 北東の隅から時計回りに撒く
- 奥の部屋から玄関へ抜けていく
- 大麻の代わりに榊と塩湯で振りそそぐ
- 一部屋だけ重いときは中央で祓詞をもう一度
- マンションは入口とベランダの両端で
- 敷地の四隅と中央には砂から撒く
- 社で切麻を授かってきたとき
- 撒いた物を翌朝までに掃き集める
- 庭に撒いた分は土に任せる
- 新築の現場では札と鎮物の置き場所も決まっている
- 車は四隅に撒いてから乗りはじめる
- 出先から戻ったら玄関の外で身を祓う
- 押し入れから前の住人の切麻が出てきたら
- 賃貸の部屋で撒いたときの始末
- 余った切麻と途中で止まったときの扱い
ぬさと打撒、御殿の四隅に撒いた米
切麻はきりぬさと読む。ぬさは麻の古い呼び名で、神職が左右に振る大麻も同じ字を当てる。紙と麻を細かく刻んで撒けば、振る代わりに散らして祓えるわけだ。
麻を刻む発想は大祓詞にも出てくる。天つ菅麻を本刈り断ち末刈り切りて、八針に取り裂きて。あまつすがそを、もとかりたち、すえかりきりて、やはりにとりさきて、と読んだ。清い麻の根元と先を刈りそろえ、細かく裂いて祓いの具にする、というくらいの意味になる。
米を撒くほうは打撒と呼ばれた。平安の『宇津保物語』には、祓をするにも打撒の米が要るという一文が見える。『延喜式』の大殿祭では、忌部と御巫が御殿や湯殿、厠まで回り、四隅に米と酒と切った木綿を撒いていった。
建物の四隅へ米と刻んだ繊維を撒いて回る。今の家の祓いがやっている動きは、この時点でもう出来上がっていた。
半紙を四つに切って二十枚重ねる
切麻は手で作れる。用意するのは半紙、精麻、千枚通し、定規、カッターか切り出し小刀、それに刻んだ物を受ける箱が一つ。
ある神職が自分のブログで作り方を明かしていた。半紙を四分の一の大きさに切り、それを二十枚そろえて一度に刻むやり方だった。二十枚なら刃がまっすぐ通る。それ以上重ねると下のほうの紙がずれて、角のそろわない小片が混じってくると書いていた。
重ねた紙の縁へ、千枚通しで縦にも横にも一・五センチおきに穴を打って目印にする。人によっては一センチ間隔で打つとも書いていた。紙を押さえる指先は、穴の列から外しておく。千枚通しは下に古い雑誌か板を敷いて打つと、机に傷を付けずに二十枚の底まで針がすっと通ってくれる。
寸法は社によって少しずつ違う。東京の羽田神社は、地鎮祭の祭典用具の案内で、紙と麻を二センチほどに切った物を切麻と呼んでいた。一センチから二センチの間に収まれば、どこの社の切麻とも見た目はそろう。
横に切ってから縦に裁つ
目印を打ったら、定規を当てて横方向へ刃を入れていく。刃は折ったばかりの新しい物がいい。切れ味が命。二十枚を一回で切り抜こうとせず、同じ線を二、三度なぞるつもりで引いた。
横が全部終わったら向きを変え、縦方向を裁つ。ここで焦らない。定規は強く押さえておく。紙の端をほんの少しつなげたまま残しておくと、細長い短冊がばらけず、縦を切るときに暴れない。
裁ち終えたら箱の上で紙をほぐす。ここが楽しい。正方形の小片がぱらぱらと落ちてくるはずだ。はさみで一枚ずつ切るより手早く、角もそろう。
撒く量の見当もつけておきたい。多すぎても掃除が増えるだけ。切麻を作って納める業者の案内には、一袋に半紙百枚分の切麻が入るとあった。家一軒を回るだけなら、四分の一の半紙二十枚を一回刻めば、部屋が多くても十分に足りる量になる。
精麻を裂いて紙と混ぜる
麻は精麻を使う。量は少しでいい。大麻の茎の皮から取った白っぽい繊維で、神具店や手芸店で束になって売られている。化学繊維の麻ひもは使わない。神具店なら神事用と書いた精麻の小束が手に入るので、迷ったらそれを選べば間違いないよね。
精麻の束から指で少しずつ引き出し、細く裂いてから、紙と同じくらいの長さにはさみで切る。ふわっと広がる程度に裂いておくと、撒いたときに宙で散りやすい。
切った麻を紙の小片の箱へ入れ、手で軽く混ぜれば切麻の出来上がり。先の神職も、ほぐした紙に麻緒を細かくしたものを混ぜたら終わり、と書いていた。紙と麻の割合を決めた案内は見当たらなかった。
封筒の業者の説明では、色の付いた紙を混ぜたり、米や塩まで混ぜたりする切麻もあるという。京都の城南宮が授けている切麻は紅白の紙だった。城南宮はこの紅白の紙を、白砂で祓ったあとの土地の神へ差し上げる供え物という位置づけで説明していた。白だけでも紅白でも、社ごとの好みの範囲。
洗米を干して、塩と酒を一合ずつ量る
散米には洗米を使う。いつもの米を研いでざるにあけ、半紙を敷いた盆へ広げて陰干しにする。指からさらさら落ちるまで乾かさないと、床や土に張り付いて後が面倒だ。
量の目安は、大阪の許麻神社の案内が分かりやすい。土地を自分で清めるとき、米一合、塩一合、日本酒は三合から一升を用意するとしていた。
塩は粗塩でいい。神棚に供えている塩を下げて使う家もある。精製塩でも困りはしない。
入れ物は四つに分ける。皿は小さめ。切麻、洗米、塩、酒をそれぞれ小皿か土器に取り、盆に並べて持ち歩く。器が無ければ、半紙を折って袋にし、口をひねって閉じておけば足りる。
三つを一つに混ぜて撒く地域もある。皿を四つも持って回るのが面倒なら、切麻と米と塩を一つの器で混ぜ、酒だけ別にしてもいい。香川の地鎮祭では、切麻と米と塩を混ぜた物を撒くのが普通だと催事業者が書いていた。
器を左手に、窓を一か所開けて回る
神職は切麻を唐櫃や土器に入れ、米や塩と一緒に持って撒く。先の神職のブログにも、唐櫃に入れて米や塩と撒くと書いてあった。家でやるなら、四つの小皿を載せた盆を左手で持ち、右手でつまむ形になる。
盆は胸の高さ。肘は軽く曲げる。低く持つと、かがむたびに皿の中身がこぼれる。
回りはじめる前に、家の中の窓を一か所だけ開けて、外の風が通るようにしておく家もある。祓った物の出口を作るという考え方で、玄関か、家の奥から見て玄関と反対側の窓を選ぶ。社の案内で決まっている話ではない。気持ちの置き所。
回っている間は、テレビやラジオを消しておく。家族がいるなら、終わるまで同じ部屋にいてもらうか、先に外へ出てもらうかを決めておくと、途中で人とぶつからずに済む。
六月と十二月の晦日に合わせる家もある
日取りの決まりは特に無いけれど、神社の大祓に合わせて家を祓う家もある。大祓は六月と十二月の晦日に行う祭りで、半年分の罪穢れを祓う日だ。
社で夏越や年越の大祓を受け、その晩か翌朝に家の四隅を回る。人の身は社で、家は自分で、という分け方になる。
大祓で授かった人形や茅の輪の札の扱いは、それぞれの社の案内に従う。切麻を撒く手順とは別の話なので、ここでは触れない。
手と口を清め、自分の体を左右左で祓う
日取りに決まりはない。気楽でいい。引っ越しで荷を入れる前の空っぽの日や、大掃除を済ませた日、月の一日や十五日を選ぶ家が多い。建築の祓いを兼ねるなら、許麻神社は三隣亡の日を避けるよう書いていた。
服装の定めも特に無い。改まった服にしておけば十分と許麻神社にあった。回る前に部屋は掃除しておく。埃の上に撒いても、あとで一緒に掃くことになるだけだ。
手を洗い、口をすすいだら、切麻をひとつまみ右手に取る。自分の左肩、右肩、左肩の順に振りかけて、身を先に祓っておく。
神職が大麻を左、右、左と振るのと同じ順。厄祓いで授かった切麻の使い方を尋ねた問答の答えにも、同じ説明があった。一礼して右手でつかみ、左、右、左と撒いたら一礼する、という手順だ。唱えるのは、心の中ではらいたまえきよめたまえを三回。
家の中心で祓詞を一回読む
神棚があればその前で二拝二拍手一拝をし、神棚が無ければ家の真ん中あたりの部屋に入って、東か南を向いて立つ。そこで祓詞を一回、声に出して読む。一回で足りる。神社の祭りで最初に奏上される短い詞だ。
原文は、掛けまくも畏き伊邪那岐大神、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に、禊ぎ祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等。諸々の禍事罪穢有らむをば、祓へ給ひ清め給へと白す事を聞こし食せと恐み恐みも白す。
読みは頭から、かけまくもかしこき、いざなぎのおおかみ。つくしのひむかのたちばなのおどのあわぎはらに、と続く。みそぎはらえたまいしときに、なりませるはらえどのおおかみたち。もろもろのまがごとつみけがれあらむをば、と読んだら、あとは結びだ。はらえたまいきよめたまえと、もうすことをきこしめせと、かしこみかしこみももうす。
意味をかいつまむと、禊のときに生まれた祓いの神々への呼びかけ。あれこれの災いや罪穢れを祓い清めてください、と謹んで申し上げている。
紙に書いて読んで構わない。暗記は要らない。神職も祝詞は紙を見て奏上している。低めの声で句ごとに区切って読み、読み終えたら一拝する。社によって仮名遣いや句の切り方に少し揺れがあるけれど、どの社で習った形でも骨組みは同じだった。
北東の隅から時計回りに撒く
部屋の四隅は北東から入り、時計回りに南東、南西、北西と回る。許麻神社の自分でする清めも、白鬚神社の地鎮祭の式次第も、この順だった。北東は鬼門。そこを最初に押さえてから、日の巡る向きに合わせて回っていく形だ。
隅の前に立ったら一礼し、洗米をひとつまみ取って、左前の床へ撒く。右前へ撒き、もう一度左前へ撒いた。一か所で三回。左右左。
許麻神社は米の次に塩、酒、切麻の順に、それぞれ同じく三回ずつ撒くとしていた。室内なら酒は指先に付けて弾く程度にしておく。畳や白木に染みると跡が残るからだ。
撒くときは手首を軽く返し、つまんだ指のあいだからぱらぱらとこぼしてやる程度で足りる。投げつける必要はない。床に届く前に宙でふわりと広がるくらいが、見ていていちばんきれいな撒き方。
撒きながら略拝詞を唱える家もある。原文は、祓へ給ひ清め給へ、神ながら守り給ひ幸へ給へ。読みは、はらえたまい、きよめたまえ、かむながらまもりたまい、さきわえたまえ。祓い清めてください、神の御心のままにお守りくださり幸いをお授けください、という意味になる。
四隅が済んだら部屋の中央へ戻る。白鬚神社の次第では、四隅のあと最後に斎場の中央を祓い清めていた。中央でも同じ左右左で撒き、入口のほうを向いて一礼すれば、その部屋は閉じたことになる。
部屋が東西南北を向いていないなら、北東に近い隅から時計回りに回ればいいと許麻神社にあった。角が五つ六つある部屋なら、角の数だけ回る。
奥の部屋から玄関へ抜けていく
家全体の順は、奥の部屋から始めて玄関で締めると組みやすい。祓った物を奥から外へ送り出す流れになるからだ。二階建てなら二階の奥から回り、階段を下りて一階へ移る。この順は社が定めた決まりというより、回りやすさの目安と思っておけばいい。
押し入れや納戸、クローゼットは扉を開け、手前の床へ同じように左右左で撒く。台所と風呂と便所も飛ばさない。水と火を使う所は、四隅のあとに流しやコンロの脇へ塩を少し置いておく家もあった。
最後が玄関だった。締めの場所。土間の左右の隅に撒き、扉を開けて外へ向け、左右左でもう一度撒く。そこで略拝詞を唱えて一礼する。
一度に回りきれなければ、今日は一階、明日は二階と分けても構わない。途中で食事や長話を挟まないほうが、気持ちよく回りきれるらしい。
大麻の代わりに榊と塩湯で振りそそぐ
大麻を持っていない家なら、榊の小枝で代わりが利く。茶碗に水を張り、塩をひとつまみ溶かして塩湯を作る。榊の葉先を浸し、隅ごとに左、右、左と振りそそぐ。
香川の地鎮祭の話をした催事業者も、地域や社によっては榊に塩水を付けて祓う方法があると書いていた。切麻を撒く代わりにこちらを使う社もあるわけだ。
切麻と塩湯を両方使うなら、隅に立って先に塩湯で三度振り、そのあと米と塩と切麻を撒く。順番を決めた案内は見当たらなかったので、家で一度決めたら毎回同じにしておけばいい。
使い終えた塩湯は流しに捨てず、庭木の根元か玄関先の土へ撒いてしまう家が多い。榊は白紙に包んで、切麻の包みと一緒に始末する。
一部屋だけ重いときは中央で祓詞をもう一度
家の中で一部屋だけ空気が重い、夜になるとそこから物音がする、という相談は昔から絶えない。そういう部屋は家全体を回り終えたあとで、もう一度だけ単独で回る家もあった。
回り方は同じ。順も左右左も変えない。北東から時計回りに四隅へ撒き、中央へ戻ったら、祓詞をもう一回読む。翌朝に掃き集めるときも、ほかの部屋と同じく奥から入口へ向けて掃き出していく。
三日続ける、七日続けるという話も聞くけれど、回数を定めた社の案内は見つからなかった。何日続けたら効くという話を裏付ける資料も、神社の側からは出ていないようだ。正直、ここは家ごとの気の済み方次第。
鏡や古い人形、前の住人が残した家具のように、気になる物がはっきりしているなら、その物の前でも左右左で撒く。手放すと決めたら、ごみに出す前に神社や寺へ相談し、供養やお焚き上げに回してもらう。人形供養を受ける寺社は多い。
マンションは入口とベランダの両端で
集合住宅だと、敷地の四隅にあたる場所が自分の手に無い。城南宮は転宅の案内で、マンションなら入口とベランダの両端の四か所に清めの御砂を撒くとしていた。切麻もこれに合わせれば迷わない。
玄関の扉の内側で左右二か所、ベランダの左端と右端で二か所。これで四か所。そこへ北東の隅に近いほうから順に撒いていく。
共用廊下や階段、隣との仕切りの外へは撒かない。ここは守る。祓いのつもりでも、ほかの人から見ればただの散らかしになる。ベランダでも風の強い日は避けたほうがいい。
敷地の四隅と中央には砂から撒く
戸建てで庭があるなら、屋内を終えてから外へ出て敷地を祓う。靴は履いていい。許麻神社の手順がそのまま使える。
敷地の北東の隅に立ち、社で授かった清めの砂をおよそ五分の一撒く。南東、南西、北西、中央と同じように撒いて、五か所で砂を使い切る。
砂が済んだら、同じ五か所を同じ順でもう一周する。米をひとつまみ左前、右前、左前と三回撒き、塩、酒、切麻も三回ずつ撒いていく。
城南宮の清めの御砂は、新築なら敷地の四隅と中央、引っ越しなら新居の敷地の四隅に撒くとしていた。中央を入れるかどうかは社ごとに違う。白鬚神社の地鎮祭でも、四隅を回ったあと最後に中央か盛砂の所を祓い清めていたから、迷ったら中央まで入れておけば足りる。受けた社の説明に合わせればいい。
社で切麻を授かってきたとき
切麻は自分で作らなくても、社で授かれることがある。城南宮は清めの御砂に紅白の小さな切麻を添えていて、白砂が穢れや邪霊を祓い、切麻は土地の神への供え物だと説明していた。
同じ城南宮の車のお祓いでは、車の形に抜いた紅白の切麻を御砂と一緒に授けていた。駐車場と車に撒いてお祓いする、という使い方だ。
許麻神社では、自分で土地を清める人に鎮物とお砂と切麻を授け、米と塩と酒は家で用意する形を取っていた。社によって授ける物の組み合わせがまるで違う。受けるときに、何を家で揃えるのかを社務所で聞いておくといい。
授かった切麻は、袋から出さずにそのまま白い紙で包み、神棚か目線より高い棚に置き、撒く日まで湿気から離しておく。袋に使い方が書いてあれば、そちらを優先する。
撒いた物を翌朝までに掃き集める
室内に撒いた物は、その日のうちか翌朝には掃き集める。一晩置くかどうかは家の考え方次第で、すぐ掃く家もあれば、祓った気が落ち着くまで翌朝まで置いておく家もあった。箒とちりとりを使い、撒いたときと同じく奥の部屋から玄関のほうへ向けて、順に掃き出していく。
畳の目やフローリングの溝に入った米粒は、掃除機で吸って構わない。塩が残ると湿気を吸って床を傷めるので、最後に固く絞った雑巾で隅を拭いておく。
集めた物は白い紙に広げ、塩をひとつまみ振って包む。口は折り込んで閉じる。包みは一部屋ごとに分けなくていいので、家じゅうの分をまとめて一つか二つの包みにしてしまえば、持ち運ぶのも楽になる。
包みの行き先は二つ。お焚き上げか、ごみか。神社のお焚き上げに預けるか、自治体の決まりに従って燃えるごみに出すか。切麻の使い方を尋ねた先の問答には、本来は川に流すものとも書かれていたけれど、今は流さず包んで出す家がほとんどだろう。お焚き上げを受ける物は社ごとに違うので、持っていく前に一言聞いておく。
庭に撒いた分は土に任せる
敷地に撒いた切麻は掃かない。ここは楽。許麻神社は、土に還るまでそのままにしておくのが原則だとしていた。米は鳥が拾っていくし、紙と麻は雨で土に戻る。
隣の家へ飛んで困るなら話は別。集めて土に埋めればいいとも書いていた。敷地の隅を少し掘り、白紙ごと埋めておけば見た目も荒れない。
授かった鎮物は、許麻神社の案内では敷地の中央の地面に置いて手を合わせ、工事の無事と家の繁栄を念じて一礼する。今は儀式のあといったん引き上げ、基礎の工事のときに埋めるのが普通だと書いていた。
城南宮も、工事の間に現場に祀っていた方除御札は、完工したら社へ返すよう書いていた。授かった物の返し先は、受けた社になる。
新築の現場では札と鎮物の置き場所も決まっている
家を建てている最中なら、切麻と一緒に授かる物が増える。城南宮の案内がいちばん細かい。
方除御札は、工事現場の中央へ向けて竹に挟んで立てておく。鎮め物は基礎ができたときに、建物の中央あたりを掘り下げて埋める。上棟御札は、屋根と天井のあいだの空間に納めるとしていた。
清めの御砂と切麻は、その前に敷地の四隅と中央へ撒いておく。つまり順番は、砂と切麻で土地を祓い、方除御札を立て、基礎で鎮め物を埋め、棟上げで上棟御札を納める、という流れになる。
工事が終わったら方除御札だけは城南宮へ返す。現場の札を片付け忘れる家が多いらしく、案内にもわざわざ書いてあった。返しそびれた札は、次に参るときに社務所へ一言添えて納めればいい。
車は四隅に撒いてから乗りはじめる
切麻を使う先は家と土地だけじゃない。城南宮は車のお祓いで、車の形に抜いた紅白の切麻を清めの御砂と一緒に授け、駐車場と車に撒くよう案内していた。
撒く場所を細かく決めた案内は無いけれど、車体の前後左右の四隅と、駐車場の四隅に撒く人が多い。家と同じく北東に近い角から時計回りに回ると迷わない。
車の中には撒かない。これは大事。座席の隙間に入った紙片は取れにくく、送風口に吸われることもある。車内は授かった交通安全の御札を吸盤で貼っておけば足りる。
駐車場に撒いた切麻は、庭と同じで土や雨に任せる。月極の駐車場なら、ほかの人の区画へ飛ばないよう、風のない日を選んで少なめに撒く。
出先から戻ったら玄関の外で身を祓う
自分の体を祓う使い方は、家の祓いの日だけに限らない。弔いの帰りや、気の重い場所から戻った日に、玄関の外で切麻を振りかけてから家へ入る人もいる。
やり方は最初に書いたとおり。右手にひとつまみ取り、左肩、右肩、左肩と振りかけて、手のひらを払う。落ちた切麻は玄関の外へ掃き出しておけばいい。玄関の内側へ落ちた分も、翌朝の掃除のときに一緒に外へ掃き出してしまえば、それで片付いた。
清め塩を使う場所と、ちょうど同じ所で同じ動きをすることになる。持ち歩くなら、名刺ほどの大きさに折った半紙へ包み、鞄の内ポケットに入れておく。湿気で固まってきたら入れ替える。
神社の境内にも、参拝者が自分で祓えるように祓串を置いている所がある。一礼して両手で取り、左、右、左と自分を祓って元へ戻す。切麻を振りかけるのは、この動きを手のひらの中で小さくやるようなものだ。
押し入れから前の住人の切麻が出てきたら
中古の家に移ると、押し入れや納戸の奥から、白い紙片と麻の繊維と米粒がひとかたまりで出てくることがある。前の住人が神職に家を祓ってもらった名残だ。
見つけたら素手でつままず、箒で白紙の上へ掃き寄せる。塩をひとつまみ振って包み、近くの氏神の社務所へ持っていって事情を話せばいい。お焚き上げに回してくれる社もある。
そのあと自分で祓い直すなら、半紙を四つに切るところから始める。一から作り直し。前の住人の切麻を撒き直して使うのは避けておく。人の家のために撒かれた物だから。
賃貸の部屋で撒いたときの始末
賃貸の部屋でも手順は変わらない。変わるのは後始末の念の入れ方だ。
米粒や塩の跡が残ったまま退去すると、原状回復の話でもめる種になる。撒いた日のうちに掃き集め、塩を撒いた隅は固く絞った雑巾で二度拭きしておく。
酒は室内では弾く程度にとどめたけれど、賃貸なら省いてしまっても構わない。床に酒の染みを残したくない部屋なら、酒だけを省いて、米と塩と切麻の三つで四隅を回る家もある。
畳の部屋では、米粒が目の奥に入り込む。掃除機を畳の目に沿ってかけると取りやすい。逆目にかけると、細かい米粒がかえって奥へ押し込まれて、あとから何日もぽろぽろ出てくることになる。
余った切麻と途中で止まったときの扱い
余った切麻は湿気の入らない缶か箱にしまっておく。乾燥剤を一つ入れておくと、梅雨を越しても紙が波打たずに済む。黄ばんできたら白紙に包んで始末し、新しく刻み直す家もあった。余った洗米は炊いて食べてしまう家が多い。捨てるのは気が引けるものね。
途中で来客や電話があって止まったら、その部屋の中央に戻って一礼し、続きは改めて北東の隅から回り直す。逆回りで戻るよりは、そのほうが順が崩れない。
小さな子どもや犬猫のいる家では、翌朝まで待たずに、撒いたらその部屋ごとにすぐ掃き集める。米や塩を口に入れさせないためだ。コンロの近くでは切麻を撒かない。紙と麻は燃えやすく、火の上へ落ちると焦げて煙が出る。
仏壇の前は撒かず、手を合わせるだけにしておく家が多い。浄土真宗の家では祓いそのものを持ち込まない考え方もあるので、気になるなら菩提寺に一度聞いてから決めればいい。
