- 一月九日の真夜中、西宮の赤門が閉まる
- 三社の日取りを暦に書き込んでおく
- 拝む相手の名を覚えてから出かける
- 宵、本、残り福のどれに行くかを先に決める
- 三社を一日で回るなら、閉門の早い順に組む
- 家を出る前に去年の笹と札をまとめる
- 鳥居をくぐったら古い笹を先に納める
- 手水を使ってから本殿で二拝二拍手一拝する
- 今宮は本殿裏の銅鑼、京都は本殿横で念を押す
- 笹に神霊が宿ると見てきたわけ
- 笹を受けてから福娘に吉兆を結んでもらう
- 吉兆と小宝は数より組み合わせで選ぶ
- 西宮で居籠と開門神事に合わせて参る
- 祈祷を頼むなら受付と初穂料を確かめて包む
- 持ち帰った福笹を南か東の高い所に祀る
- 祀ったあとの一年の拝み方
- 翌年の十日戎で笹を納め、新しく受け直す
- 残り福の夜に行くときの段取り
- 人混みの中でやらないことと、笹が折れたときの対処
一月九日の真夜中、西宮の赤門が閉まる
一月九日の深夜十二時、西宮神社では境内の門がすべて閉じられる。神社の開門神事の解説によると、もとは町の家々も門松を逆さにして戸を固く閉め、明かりを消して夜明けを待った。これが忌籠、居籠とも書く神事だ。
夜が明ける午前六時、大太鼓を合図に表大門、通称の赤門が開く。待っていた人たちが二百メートルほど先の本殿へ駆けていく。早く着いた順に一番から三番までが、その年の福男になる。
えべっさんの祭りは、静かに籠もって迎え、門が開いたら福をいただきに行く。その流れが一月九日から十一日の三日間に詰まっている。短い祭りだ。以下は、大阪の今宮戎神社、兵庫の西宮神社、京都の京都ゑびす神社を例に、日取りの選び方から笹の納め方までを順に書いていく。
三社の日取りを暦に書き込んでおく
呼び名はどこもほぼ同じ。九日が宵えびす、十日が本えびす、十一日が残り福だ。今宮戎神社の行事一覧では、九日が例大祭「十日戎・宵えびす」、十日が「本えびす」、十一日が「残えびす」と並んでいた。
今宮はその前後にも行事がある。八日に献茶祭と舞楽奉納、御千度神事。十二日は賽物勘定始祭で、三日間に納まったお賽銭を数え始める祭りになる。福娘が授与所に立つのは九、十、十一日の三日間、朝九時から夜九時までと神社が案内していた。
十日の本えびすに供える神饌も、行事一覧に並んでいた。赤飯、御酒、鰤の味噌蒸し、鰆の塩物、あわびの塩物、小鯛の塩物、生蛤、なます。海の物ばかりで、漁の神でもあるえびす様らしい献立だった。
西宮神社は九日の午後四時に十日戎宵宮祭、十日の午前四時に十日戎大祭、同じ十日の午前六時に開門神事福男選び。十五日の午前十時には十日戎報賽祭がある。報賽は、受けた福へのお礼を奉る祭りのことだ。
京都ゑびす神社は五日間と長い。八日の招福祭から始まり、九日が宵ゑびす祭、十日が十日ゑびす大祭、十一日が残り福祭、十二日が撤福祭。神社の案内では、九日と十日は夜通し門を開けている。十一日は午前零時、十二日は午後十時に閉門だ。
京都ではほかにも、八日の午後二時に湯立て神楽があった。九日には招福まぐろの奉納。神楽殿では期間中、朝から晩まで神楽が奉納されると書いてあった。
二〇二七年の暦で数えると、九日が土曜、十日が日曜、十一日が月曜の成人の日になる。三連休にぴったり重なるので、どこも人出は多めと見ておいたほうがいい。
拝む相手の名を覚えてから出かける
三社とも、えびす様を祀る社だ。ただ、神社ごとに祭神の顔ぶれは少しずつ違う。願いを言う前に、どなたに向かって手を合わせるのかを知っておくと、拝礼のときに迷わない。
西宮神社は、えびす宮の総本社を名乗り、えびす大神を祀っている。今宮戎神社は、天照皇大神と事代主命を中心に、素盞嗚命、月読尊、稚日女命を合わせて祀る。京都ゑびす神社は八代言代主大神を主祭神に、大国主大神と少彦名神を合わせて祀っている。
名前は長いので、拝礼のときは「えびす様」で十分。覚えるのは、社ごとに相手が違うということだけでいい。
宵、本、残り福のどれに行くかを先に決める
三日のうち、どの日に行っても受けられる福は同じだとする見方が多い。どれも正式な祭りの日だ。残り福という名前も、まだ福は残っている、という意味で使われている。残り物には福がある、の言い回しと同じ理屈だ。
本えびすに行けなかったから損をした、と考えなくていい。気楽でいいのだ。神社の案内にも、三日のどれが格上だと書いたものは見当たらなかったし、行ける日に行けば十分だと思う。
決め方の目安は、何を優先するかだ。答えは人による。神事に合わせたいなら、西宮は十日の早朝、京都は各日の祭典の時刻が分かりやすい。京都ゑびす神社では、九日と十日の祭典が午後二時、十一日と十二日は午後八時だった。
舞妓さんから笹を受けたいなら京都の十一日。午後二時から四時が祇園町、午後八時から十時が宮川町の舞妓さんによる授与だと神社が出していた。とにかく空いている時間に済ませたい人は、夜遅くか朝早くを狙う。宵と本の夕方は、どこも身動きが取りにくい。九日と十日の日暮れどきが、いちばん詰まる時間帯だった。
商売をしている家なら、店を開ける前に行ける日を選ぶのもありだ。西宮なら十日の早朝に大祭と開門があるので、参ってから店を開ける段取りも組めるかもしれない。
三社を一日で回るなら、閉門の早い順に組む
三社をはしごする人もけっこういる。忙しい一日になる。そのときは、門が閉まる時刻から逆算して順番を決める。
西宮神社は九日の夜十二時に門を閉じ、翌朝六時まで入れない。京都ゑびす神社は九日と十日が夜通し開門だった。今宮戎神社の福笹は、朝七時ごろから深夜一時ごろまで受けられると紹介する案内があった。
九日に回るなら、西宮を先に済ませ、今宮、京都と東へ上がっていく形が組みやすい。西宮は阪神の西宮駅から歩いて五分と観光協会が出していた。今宮は南海の今宮戎駅のすぐそば、京都ゑびす神社は京阪の祇園四条駅から歩ける距離にある。
十日なら、西宮の開門神事を見てから大阪、京都へ移る流れもある。十一日の京都は午前零時に閉門なので、最後に回すなら時刻に気をつける。十二日の撤福祭も朝九時から夜十時まで開いていた。京都だけは、十二日に行っても間に合う。
三社の笹を全部受けると、手がふさがって次の参拝がやりにくい。受けるのは一社だけにして、ほかの社では拝礼と御札だけにする人もいる。そのほうが身軽だ。
家を出る前に去年の笹と札をまとめる
去年受けた福笹があれば、持って行く。一年たった笹は枯れて葉が落ちているはずなので、紙袋か新聞紙でくるんで、吉兆も付けたまま運ぶ。途中で葉が散らばらないようにしておくと、電車の中でも気が楽だ。
納める先は、受けた神社が基本。神社本庁の案内も、古いお神札は一年守ってもらったことに感謝してから、受けた神社の古神札納所などへ納め、お焚き上げしてもらう形を勧めている。今宮で受けた笹は今宮へ、京都で受けた笹は京都へ返すのがいちばん素直だ。迷ったらそれ。
財布には小銭を多めに入れておく。これは大事。賽銭箱の前は人が詰まっていて、お札を出して崩す余裕はまず無い。吉兆や小宝の初穂料も千円単位が多いので、千円札も何枚か。
服装は歩きやすい靴と、両手が空く鞄。一月の夜の境内は冷えるので、長く並ぶつもりなら手袋と襟巻きも持っていったほうがいい。笹を持つと片手がふさがるので、賽銭や初穂料を出すときにもう片方の手しか使えなくなる。帰りは笹を立てて持つことになるから、背の高い荷物を増やさないほうがいい。
鳥居をくぐったら古い笹を先に納める
境内に入ったら、参拝より先に古い笹を納めてしまう。順番が肝心。今宮戎神社では、鳥居をくぐったあたりに古笹納所があると紹介されていた。去年の福笹はここへ置いていく。古い笹を先に手放しておけば、新しい笹を受けるときに両手が空いていて、授与所の前でもたつかずに済む。
納めるときは、手を合わせて一年のお礼を心の中で言う程度で十分。決まった唱え言葉は無いし、神社の案内にも、納めるときに何かを唱えるよう求める文は見当たらなかった。吉兆を外す必要も無く、受けた姿のまま置けばいい。
西宮や京都でも、期間中は古札や古い笹を受ける場所が設けられるのが通例で、たいてい参道の入口近くにある。場所は年によって変わるので、境内の案内板か社務所で聞く。手ぶらになってから参拝の列に並ぶと、そのあとの動きがずっと楽になる。
受けた神社が遠くて行けないときは、近くの神社で納めてよいかを先に尋ねる。神社本庁の案内では、左義長やどんど焼きで古い札を焚き上げるのは大晦日から一月十五日までが多い。その期間に近所の神社へ持ち込む家も多い。
手水を使ってから本殿で二拝二拍手一拝する
手水舎では、神社本庁の案内どおりに進める。順番は三つ。右手で柄杓を取って水を汲み、左手にかけて洗う。柄杓を左手に持ち替え、もう一度水を汲み上げて、今度は右手に水をかけて洗う。
もう一度右手に持ち替え、左の手のひらに水を受けて口をすすぐ。混んでいて柄杓が使えない年は、流水で手を清めるだけの形に変える社もある。そのときは案内に従えばいい。
本殿の前に着いたら、賽銭を納めて拝礼する。基本は再拝、二拍手、一拝。背中を平らにして腰を九十度に折る拝を二回。胸の高さで両手を合わせ、右の指先を少し下にずらし、肩幅くらいに開いて二回打つ。
打ち終えたら指を揃え、姿勢を正して最後に一回拝をする。願いごとは拍手のあと、手を合わせたまま心の中で。住所と名前を先に名乗ってから願う人も多い。
十日戎の本殿前は、後ろから次の人が押してくる。長く留まれないので、言うことは家を出る前に一言にまとめておく。商売繁盛、家内安全、今年一年の無事。短いほうが迷わない。
今宮は本殿裏の銅鑼、京都は本殿横で念を押す
正面の拝礼が済んでも、えべっさんの参拝はまだ終わりではない。今宮と京都には、横か裏へ回ってもう一度声をかける習わしがある。
今宮戎神社では、参拝の順路の最後、本殿の裏に銅鑼が下がっている。これを鳴らして、商売繁盛の願いの念押しをする。えべっさんは耳が遠いので大きな音で知らせる、という話が添えられることが多い。叩くのは一回か数回で、後ろに人が並んでいれば手早く済ませる。長居は無用。
京都ゑびす神社では、本殿の横に回り、壁の板をトントンと軽く叩いて、参りに来たことを知らせる。横参りと呼ばれる作法だ。京都の観光案内では、大阪の銅鑼に比べて京都らしく控えめだ、と紹介されていた。
板は強く叩かない。指の関節で軽く当てる程度で足りる。回数を決めている社の文書は見当たらなかったので、音が届けばいいくらいに考えておく。
西宮神社には、今宮の銅鑼や京都の板にあたる作法を神社が案内しているものは見当たらなかった。西宮では正面の拝礼と、開門神事のような神事への参列が中心になる。
笹に神霊が宿ると見てきたわけ
今宮戎神社は、竹について自分の言葉で説明していた。清らかで力強く、節で苦難に耐え、冬にも青い葉を付け、よく殖える。その強い生命力から、神霊が宿るものと信じられてきた、と。
京都の案内には、吉兆笹は京都ゑびす神社で四百年ほど前に生まれた、という話も出ていた。えびす様が持つ釣り竿と、縁起のよい笹を重ねて形にしたのだという。どこまで確かな年代かは分からない。ただ、笹を竿に見立てて福を釣り上げる、という考え方は分かりやすい。
笹を受けてから福娘に吉兆を結んでもらう
参拝が済んだら、いよいよ福笹だ。今宮戎神社の案内によると、笹は境内の笹お渡し所で受ける。期間中は無料だ。笹そのものはお祓いを済ませてあるが、御魂は込められていない、と神社ははっきり書いていた。正直な案内だった。
御魂が込められているのは、神社から直接授かる御札と、小宝吉兆類のほう。今宮で言えば大神符や三体神符、それに吉兆、福袋、大判などだ。笹は土台で、そこに結ぶ物が本体という考え方になる。ここは覚えておきたい。
笹を持ったら福笹授与所へ。福娘をはじめ奉仕の人たちに、選んだ御札や吉兆を笹へ結んでもらう。神社は福娘を、神々と参拝者の仲を取り持つ巫女だと説明していた。自分で結ぶのではなく、授与所で結んでもらうのが今宮の流れだ。
京都ゑびす神社は、吉兆笹として笹と飾りをまとめて授与している。神社の案内に並んでいたのは、大宝、福俵、福箕、福熊手、福鯛、宝船、宝来など。御札、御守、福銭、小判も授けている。京都観光の鉄道会社の案内では、福笹が三千五百円、福俵、福箕、福鯛、福熊手などが各千五百円と出ていた。
西宮神社の授与は、西宮市の資料によると、笹は江戸時代ごろから縁起物に使われ、戦後になって吉兆店で小判や俵を付けた福笹として授けるようになった。境内の吉兆の店に、えびす面や熊手、福俵が並ぶ。地元の案内では大きい笹が三千円、小さい笹が千五百円と紹介されていた。
吉兆と小宝は数より組み合わせで選ぶ
今宮戎神社の吉兆は、あわびのし、銭叺、銭袋、末広、小判などを一まとめにした飾りだ。これを一つ結ぶと、ひと通りの縁起物がそろう。便利な飾りだった。
小宝は一つずつ選べる。今宮の授与品一覧には、大判、福袋、福俵、金俵、末広戎、熊手戎、福よせ、福槌、茅ノ輪戎、えびす鯛、鳥居戎、えびす稲蓬莱、宝船、金笹、破魔矢などが並んでいた。
初穂料は千五百円からと紹介する案内がある。実際の額は年ごとに授与所の札で確かめる。
笹は軽いほうがいい。欲張って何個も結ぶと、笹がしなって持ち帰るのに苦労する。これは本当。ざっくりした目安なら、吉兆を一つと御札を一体、あとは気になる小宝を一つか二つ。商売の家なら熊手や福よせ、家の無事を願うなら福袋や福俵を選ぶ人が多いようだ。
今宮の御札は、大神符と三体神符がそれぞれ二千円、家内安全の祈祷神符が千円と神社が出していた。御札を笹に結ぶか、別に受けて神棚へ納めるかは、授与所で奉仕の人に聞けば教えてもらえる。
授与所では、笹を差し出して欲しい物の名前を言い、初穂料を納めて、結び終わるまでその場で少し待つ。結び終わった笹を受け取ったら、軽く一礼してその場を離れる。後ろにも人が待っている。
西宮で居籠と開門神事に合わせて参る
西宮神社で神事に合わせて参るなら、九日の夕方から動く。午後四時が宵宮祭。夜十二時に門が閉じ、境内は居籠に入る。
市の解説では、居籠はもとは年末から家々が戸口をふさぎ、逆さの門松を立て、夜は明かりを消してえびす様を静かに迎える神事だった。いまの参拝者が家でそこまでする決まりは無い。九日の夜は騒がず早めに休み、翌朝に備えるくらいがちょうどいい。
十日の午前四時に大祭、六時に赤門が開く。西宮市も昔の写真を集めたページで福男選びを取り上げ、昭和十五年に正式な行事として形が整ったと書いていた。福男を目指して走る人は、年ごとの参加の決まりに従い、事前の受付や抽選の有無を神社と観光協会の発表で必ず確かめておく。要項は毎年出ていた。
走らない人は、開門の一団が抜けたあとに落ち着いて参ればいい。慌てる必要はまったく無い。観光協会も、期間中は混むので譲り合って参拝するよう呼びかけていた。
十五日の報賽祭は、受けた福へのお礼の祭りだ。十日戎で願いを立てた人が、区切りとしてこの日に改めて参る形も取れる。
祈祷を頼むなら受付と初穂料を確かめて包む
笹を受けるだけでなく、商売繁盛の祈祷を上げてもらう道もある。西宮神社の祈祷は、祈祷殿で九時から午後四時半まで受け付けている。個人は予約なしで、初穂料は五千円から。企業や団体は二万円からで、団体は事前予約が要る。
遠方の人向けに、西宮は郵便による祈祷も受けている。十日戎の人混みを避けたいなら、この形を選ぶのも手だ。
京都ゑびす神社の祈祷は予約制で、電話で申し込む。十日ゑびすの期間中は、九時から夜九時まで、十二日のみ夜七時まで受け付けていると神社の案内にあった。
初穂料は、のし袋か白い封筒に入れる。新札が無難。神社本庁の案内では、表書きは初穂料、玉串料、御神前、奉納などどれを使ってもいい。表の下に名前、商売の祈願なら店名や社名も書く。
受付では申込用紙に住所、名前、願意を書いて、袋ごと渡す。呼ばれたら祈祷殿に上がり、神職が祝詞を上げ、大麻でお祓いをしてくれるあいだは、頭を下げて静かに座っている。玉串を捧げるよう促されたら、案内どおりにすればいい。
祈祷のあとは、御札や撤饌を受けて帰る。西宮の特別招福祈祷では、特別な撤供に加え、名前を台帳に記して毎朝神前に供え、一年間祈祷殿に掲示すると神社が書いていた。
持ち帰った福笹を南か東の高い所に祀る
家に着いたら、笹の置き場所を決める。向きと高さだ。今宮戎神社の案内では、御札と同じく福笹が南か東を向くように、目線より高い所に祀る。できれば静かな場所がいい、とも添えてあった。
京都の案内でも、吉兆笹は頭より高い場所に飾ると紹介されていた。背の低い棚やテレビの上は避ける。床置きも駄目だ。
神棚があれば、その横か上の壁に笹を立て掛けるか、長押や柱に紐をかけて葉先を上にして吊るす。店なら、帳場やレジの上の壁がよく使われる。人の出入りを見下ろす位置が合うようだ。
神棚が無い家は、本棚や箪笥の上に白い紙を一枚敷き、壁に寄せて笹を立てる。笹が倒れないよう、画鋲で紐を留めて支えてもいい。
西宮神社の御札は、授与品の一覧に大きさ別で並んでいた。商売繁盛の大々札が一万円、大札が五千円、中札が三千五百円。商売繁盛・家内安全札は千八百円だった。神宮大麻と組んだえびす札が二千円、神棚用の箱札もあった。
店の規模や神棚の大きさに合わせて選べばいい。札が大きいほど福が多い、という話ではない。
御札を笹とは別に受けたなら、神棚に納める。神社本庁の案内では、三社造りの神棚は中央に神宮大麻、向かって右に氏神様、左に崇敬する神社の札を置く。えびす様の札は、氏神様でなければ、崇敬する神社の位置に入るのが素直な置き方になる。一社造りなら、手前から神宮大麻、氏神様、崇敬する神社の順に重ねる。
笹は日がたつと葉が乾いて落ちる。暖房の効いた部屋だと、ひと月ほどで葉がずいぶん落ちて、枝ばかりの姿になってしまうことも多い。落ちた葉は捨てずに白い紙に集め、次に神社へ行くとき一緒に納めればいい。葉が落ちても、結んだ吉兆はそのまま一年守ってもらうつもりで置いておく。
祀ったあとの一年の拝み方
神社の案内は、家での毎日の拝み方までは細かく決めていなかった。神棚の前に立ったら、神社と同じ二拝二拍手一拝で手を合わせる家が多い。朝、店を開ける前に一度、というくらいの回数で続けやすい。
笹の前に水や米、塩を供える家もある。供えたら、その日のうちか翌朝に下げて、家の者でいただくか台所で使う。供えたまま何日も置きっぱなしにしないほうが気持ちがいい。
三社の笹を受けたときは、それぞれを並べて祀る家もある。一か所にまとめず、少し間を空けて立てれば、翌年どれをどこへ返すかも迷わない。
西宮神社には月参りの祈祷もあった。毎月決まった日に祈祷を受けに通う形で、十日戎のあとも一年のあいだ縁をつないでおきたい商売の家なら、こういう頼み方も選べる。十日戎で受けた福を毎月確かめに行く、という続け方もできるわけだ。
翌年の十日戎で笹を納め、新しく受け直す
一年は早い。次の十日戎に古い笹を持って行き、納めてから新しい笹を受ける。この回し方が、三社どこでも基本になる。
十日戎に行けない年は、受けた神社の平日に持って行くか、社務所に問い合わせる。京都ゑびす神社には、六月三十日に古札のお焚き上げがある。
西宮神社の十五日の報賽祭まで間に合うなら、お礼参りと合わせて納めるのもいい。十五日は小正月で、地域のどんど焼きもこのころに集中する。
家で燃やしたり、そのままゴミに出したりはしない。神社本庁の案内も、納所へ納めて焚き上げてもらう形しか挙げていなかった。どうしても神社へ持ち込めないときは、近くの神社で引き受けてもらえるか聞き、断られたら郵送で受け付けていないかを受けた神社に尋ねる。
残り福の夜に行くときの段取り
十一日の残り福は、宵と本より人が少なめで、落ち着いて参れる年が多い。ただ閉まる時刻は社ごとに違う。
今宮の福娘は十一日も夜九時まで授与所にいる。京都ゑびす神社は、十一日の夜八時に残り福祭の祭典があった。宮川町の舞妓さんの授与もこの時間帯だ。祭典に合わせたいなら、夜七時半ごろには境内に入っておくと慌てない。
遅い時間は、授与所の品が品切れになっていることもある。欲しい小宝が決まっているなら、第二候補も考えておく。どうしても欲しい物があるなら、早い日に行ったほうが確実だった。
人混みの中でやらないことと、笹が折れたときの対処
混んだ境内で笹を振り回さない。背の高い笹は周りの人の顔の高さに来る。持ち歩くときは、葉先を上にして体の前でまっすぐ立てる。
福男選びの走り参りに、飛び入りで加わらない。参加には毎年決まりがあり、門前の列も管理されている。走らない人は、開門直後の流れが落ち着くまで門から離れて待つ。危ないからだ。
賽銭を遠くから投げ込むのもやめておく。人の多い本殿前では、後ろの列から放った硬貨が前の人の頭や顔に当たってしまうことがある。列に並び、前まで進んでから静かに入れる。
帰り道で笹が折れても慌てなくていい。よくある話だ。吉兆と御札が無事なら、折れた先だけ白い紙に包んで持ち帰る。残った部分に吉兆を結び直して祀り、折れた先は翌年、古笹と一緒に納める。
吉兆が外れて落ちたら、拾って紐で結び直す。慌てない。失くしてしまったときは、次に参ったとき授与所で改めて受ければいい。一年のあいだに縁起物が欠けても、それで福が逃げると決めつける話は、神社の案内には出てこない。
