寺家ふるさと村

神奈川県

1. 導入

横浜に、田んぼしかない場所がある。

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と言うと、たいてい嘘だろって顔をされる。

でも本当にある。

青葉区の北の端、寺家ふるさと村ってところだ。

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町田市と川崎市に挟まれた、地図で見ると妙な位置にある一帯なんだけど。

まわりが宅地化していく中で、ここだけ田園風景が残った。

昼に行けば、完全に癒し系の観光地だ。

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家族連れが歩いてるし、直売所で野菜も買える。

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そんな場所が、心霊スポットとして名前が挙がってる。

理由は池だ。

村の中にいくつも池があって、そのうちのいくつかで変なものが出るという。

しかも語られてる話が、けっこう重い。

昼の顔と夜の顔の落差がでかそうだな、と思って向かった。

結論から言うと、落差はでかかった。

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2. 寺家ふるさと村ってどこよ

まず場所の話をしておく。

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横浜市青葉区の寺家町。

東京都町田市と川崎市にぴったり隣接してる。

雑木林の丘に挟まれた、細長い水田が続く地形だ。

こういうのを谷戸田って呼ぶらしい。

谷の底に田んぼ、両脇が森。

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昔の関東の農村がそのまま残ってる形なんだと。

行政と地元が保全してる場所で、ちゃんと拠点施設もある。

四季の家っていう建物で、駐車場もそこにある。

村の中には神社もあるし、水車もある。

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釣り堀まである。

観光地としてはかなり真っ当な部類だ。

心霊スポット扱いされてるのが不思議になるレベルで整ってる。

ただ、この地形が曲者なんだ。

谷戸ってのは要するに、両側から森が迫った細い谷だ。

日が落ちると、暗くなるのがめちゃくちゃ早い。

3. 昼の寺家ふるさと村

最初に明るいうちを見ておいた。

これは正解だったと思う。

散策路が整ってて、歩きやすい。

田んぼの脇の畦道を進むと、水の音がずっとついてくる。

用水路が生きてるんだな。

丘の上は市民の森に指定されてる森で、そこも歩ける。

すれ違うのは散歩の人と、カメラ持った人。

のどかそのもの。

ホタルが見られる時期があるらしくて、その頃は夜も人が集まるそうだ。

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横浜市が「夜は暗いから車で来るな」って注意を出してるくらいには賑わうらしい。

で、この昼の風景を見ておくと、夜の落差がよく分かる。

同じ道を暗くなってから歩くと、まるで別の場所なんだ。

4. 池がいくつもある

この村、池が多い。

名前が付いてるものだけでも複数ある。

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熊野池、むじな池、大池、新池、居谷戸池。

もともと農業用のため池だ。

谷戸の水を溜めて、下の田んぼに流す。

そういう仕組みで作られたものらしい。

で、心霊の噂が集まってるのが、むじな池と大池。

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このふたつが名指しで出てくる。

正直、行ってみるまでは半信半疑だった。

ため池なんてどこの農村にもあるし。

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ただ、現地に立つと言いたいことは分かった。

森に囲まれた池って、水面が真っ黒になるんだ。

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空の光を拾わないから、深さが読めない。

昼でも底が見えない池がある。

夜は言うまでもない。

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5. むじな池

噂の本命がここだ。

むじな池。

むじなってのはアナグマとかタヌキの類を指す古い言い方だ。

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名前の時点でもう雰囲気がある。

池自体はそんなに大きくない。

まわりを木がぐるっと囲んでて、囲まれてる分だけ静かだ。

風が入ってこないから、水面がほとんど動かない。

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鏡みたいになってる。

で、ここで語られてる話がきつい。

昔、口減らしのために子供が池に投げ込まれたという。

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だから今も、子供が溺れてるような音が聞こえる。

そういう伝承だとして紹介されてる。

正直、聞いた瞬間に手が止まった。

これ、本当なのかと。

先に書いておくと、この話の裏は取れなかった。

そのへんは後の章でまとめる。

現地で立ってみた感想としては、音は聞こえなかった。

聞こえたのは蛙と虫だ。

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ただ、水面が静かすぎるのは事実だった。

石を投げたら怒られるだろうから投げてないけど。

投げたくなる気持ちは分かる。

それくらい、何も動かない池だった。

6. 大池と、暗くなってからの村

もうひとつ名前が挙がるのが大池だ。

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こっちは開けてる。

釣り人が入るタイプの池で、日中は普通に人がいる。

明るいうちは怖くもなんともない。

問題は日が落ちてからだ。

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谷戸は本当に暗くなるのが早い。

両側の丘が光を切るから、空はまだ明るいのに足元はもう見えない。

街灯はほぼない。

散策路は舗装されてない区間もある。

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そこにカブは入れられないんで、当然歩きになる。

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ライトを持ってないと詰む、というのは大げさじゃない。

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一番効いたのは音だった。

昼はのどかに聞こえてた水の音が、夜だと妙に近い。

どこから鳴ってるのか分からなくなる。

用水路が何本も走ってるせいなんだけど、頭では分かってても落ち着かない。

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田んぼの向こうに人影が立ってるように見えて、二度ほど足を止めた。

どっちも案山子ではなく、木だった。

7. 噂をどこまで信じるか

ここは正直に書く。

むじな池の口減らし伝承、裏付けが取れなかった。

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複数の心霊系サイトが同じ話を載せてる。

ただ、どれも出典が示されてない。

郷土資料や自治体の記録にあたる情報も見つからなかった。

つまり現状、ネット上で繰り返されてる噂の域を出ない。

さらに言うと、この村について書かれてるものの中には、かなり踏み込んだ内容もあった。

村ぐるみで何かを隠してる、みたいな書き方のものだ。

そっちは根拠が何も示されてないし、実在の地域に対する話でもある。

なので、この記事では扱わない。

自分の立場ははっきりさせておく。

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裏の取れない話を、事実として書くつもりはない。

ただし、こうも思う。

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ため池での水難事故は、日本中どこの農村にもあった話だ。

子供が池で亡くなるという出来事自体は、珍しくもなんともない。

そういう記憶が形を変えて残る場所は、たぶん実際にある。

この池がそうなのかは、分からない。

分からないから、分からないと書く。

8. 行く時に守ってほしいこと

ここは心霊スポットである前に、人が住んで働いてる場所だ。

田んぼも畑も水路も、全部現役で使われてる。

畦に立ち入るのは論外。

作物に触るのも当然だめだ。

それから駐車。

横浜市が路上駐車をやめてくれと明確に呼びかけてる。

四季の家に駐車場があるので、そこを使うのが筋だ。

夜間については、市が自家用車での訪問を遠慮してほしいと出してる。

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暗くて危ないからだ。

これは霊がどうこう以前の、単純な安全の話。

歩くなら明るい時間を勧める。

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どうしても暗い時間にいるなら、ライトは必須。

そして静かにしてほしい。

すぐ横に住宅がある。

騒ぐと、その瞬間に迷惑な人になる。

9. まとめ

寺家ふるさと村は、心霊スポットとしては変わり種だと思う。

廃墟もないし、事故現場でもない。

昼はただの気持ちいい里山だ。

なのに夜になると、地形だけで人を不安にさせてくる。

谷が深くて、森が近くて、水の音が四方から来る。

暗闇に立った時の情報量が、単純に多いんだ。

むじな池の話が本当かどうかは分からない。

裏は取れなかったし、取れないまま書くつもりもない。

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ただ、あの静かすぎる水面を見ると、何かを語りたくなる気持ちは分かる。

たぶん昔の人も同じだったんじゃないか。

そう考えると、この村の噂はけっこう自然な生まれ方をしてる気がする。

行くなら昼をおすすめする。

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そのうえで、日が落ちるまで残ってみてほしい。

同じ場所が変わる瞬間が、いちばん面白いところだ。

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