2026-07

怪談

犬吠埼

写真を撮る友人がいる。以下Yと呼ぶ。風景専門で、月の出と日の出のためなら平気で夜を潰す男だ。私の動画に何度か写真を貸してくれたことがある。一月の半ば、Yから電話が来た。「初日の出、結局別の海岸で撮った」新年の挨拶より先にそれを言った。犬吠埼...
怪談

雄蛇ヶ池

釣具店で知り合って十年になる友人がいる。以下Nと呼ぶ。バス釣り一筋の男で、房総のフィールドはあらかた回っている。数字と天気に細かく、釣行のたびに水位と風をノートに残すたちだ。過去に二度、夜釣りの検証に同行してもらったことがある。機材を持つ手...
怪談

水門

田を作っている友人がいる。数年前に千葉の内陸の集落へ移り、空いていた田を借りて稲を育てている男だ。以下Tと呼ぶ。七月の頭、そのTから草刈りの手伝いに呼ばれた。人手が欲しいというのは口実で、聞いてほしい話が別にあるのは電話の声でわかった。カブ...
怪談

堀底

城巡りを趣味にしている友人がいる。月に一度ほど喫茶店で会う仲で、以下Sと呼ぶ。スタンプ帳と御城印の束を鞄に入れて全国を回っている男だ。石垣より土の城が好きだと言う。天守の写真より、堀の断面の写真ばかり撮っている。そのSが五月の終わりに、一枚...
怪談

点滅

夕方に友人が庭へ入ってきた。カブを見せろというのが口実で、用件が別にあるのは顔でわかる。缶コーヒーを持たせて縁側に座らせると、案の定切り出した。「夜の道でさ、灯りって信用できると思うか」この友人をMと呼ぶ。夜の配達を長くやっている男で、ビジ...
怪談

境界杭

測量士をしている友人から、夜の十一時すぎに電話があった。うちの固定電話はふだんほとんど鳴らない。この時間に受話器を取る用件は、だいたい決まっている。「山でさ、測っても測っても数字が合わない現場があった」受話器の向こうの声は素面だった。低く、...
怪談

砲座

三沢から電話が来たのは、盆を過ぎた蒸し暑い晩だった。固定電話の受話器を取ると、いつもの釣りの話ではない。房総の岬で撮った写真に妙なものが写っていたのだと、三沢は切り出した。声にいつもの張りがない。その岬の名を聞いて、私は少し黙った。南房総の...
怪談

畦道

三沢から電話が来たのは、盆が過ぎてしばらくした晩だった。固定電話の受話器を取ると、いつもの釣りの話ではない。房総の田んぼで妙なものを続けて見たのだと、三沢は前置きもなく切り出した。声にいつもの張りがない。その夏、三沢は房総の内陸へ何度か釣り...
怪談

水鏡

三沢とは十年来の付き合いになる。ふだんは釣りと車の話しかしない男だ。その三沢から、梅雨の明けきらない晩に電話がかかってきた。固定電話の受話器を取ると前置きもなく声が飛び込んできた。房総の県道で見てはいけないものを見た気がする。三沢はそう切り...
怪談

片足

友人の話から始める。そいつの育った町に、古い農業用のため池があった。田んぼに水を引くための、大きな溜池だ。水際には小さな石の祠が立っている。子供のころその祠のあたりで、濡れた足跡を見たという。晴れた日の昼で雨は何日も降っていない。足跡は祠の...
奇怪千万からのお願い

この記事が少しでも面白かった、役に立ったと思ってもらえたなら、ひとつお願いがあります。Amazonで何か買う予定があるとき、その前に下のボタンから入ってもらえると、私の調査の足しになります。

ここから入って買い物をすると、金額の数%が紹介料として私に入ります。あなたの支払いが増えることは一切ありません。買う物も何でも構いません。

(*´σー`) いただいた紹介料は、現地調査のガソリン代や撮影機材、古い郷土史料の購入に使います。夜のスーパーカブを走らせ続ける燃料だと思って、協力してもらえたら嬉しいです。

※当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。適格販売により収入を得る場合があります。