カクヨム掲載「心霊体験談短編集」の導入記事です。実話・体験談・聞き書きをもとに、読み物として脚色を加えた怪談として扱い、全文転載はせず冒頭のみ掲載しています。
この話について
これは中野区で一人暮らしをしていた時の話 高卒でそのまま働き始めて、安いアパートに住んでいた。 家族もいないし、帰っても誰もいない部屋だから、生活はわりと単純で静かだ。 今住んでるのも、古い木造アパート。 駅から歩いて15分くらい。築年数40年とか、それくらい。 家賃は安い。 その代わり、壁がとにかく薄い。 隣の人が咳…

冒頭抜粋
これは中野区で一人暮らしをしていた時の話
高卒でそのまま働き始めて、安いアパートに住んでいた。
家族もいないし、帰っても誰もいない部屋だから、生活はわりと単純で静かだ。
今住んでるのも、古い木造アパート。
駅から歩いて15分くらい。築年数40年とか、それくらい。

家賃は安い。
その代わり、壁がとにかく薄い。
隣の人が咳したら分かるし、携帯のバイブまで聞こえるときがある。
だから、生活音が聞こえるのは普通だった。

ただ一つ、普通じゃないことがあった。
僕の隣の部屋は、ずっと空室のはずだった。
僕がここに引っ越してきたとき、不動産屋の人が言ってた。
「隣、空いてるので静かですよ」
ドアのポストも、チラシが入らないようにテープで塞がれてるし、
ドアの横には「入居者募集」の紙が貼ってある。

たまに内見の人が来るくらいで、普段は誰も出入りしてない。
だから、夜は本当に静かだった。
…最初のうちは。

変化があったのは、引っ越して三ヶ月くらい経った頃。
ある夜、布団に入って漫画を見てた。
時間は、だいたい夜の1時すぎ。
仕事終わって帰ってきて、コンビニ飯食って、シャワー浴びて、布団に入る。
僕の生活はほとんど毎日それの繰り返しだ。
そのとき。

壁の向こうから
ミシ…

って音がした。
古い建物だから、最初は気にしなかった。
木がきしむ音とか、温度差で鳴る音とか、そういうのよくあるし。
でも。

少しして。
また。

ミシ…
ミシ…
今度は、明らかに歩く音だった。
畳を踏むような、ゆっくりした足音。
壁の向こうを、誰かが歩いてる。
僕、そこでちょっとだけ違…

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