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2026-10

怪談

伊与久沼公園、昼の動画の三十二秒

おすすめの一番上に、見慣れた景色が出てきた。「伊与久沼公園 昼 何も起きません」投稿者の名前は、ただのひる。再生回数は十万を超えていた。
怪談

稲毛・白幡大神のそばの借家で、二回だけ名前を呼ぶ声

名前は二回しか呼ばれていない。三回目が来ない。ばあさんの声が、頭の後ろで言う。人は二回で諦める。三回呼ぶのは用のある者だけだ。
怪談

鎌ケ谷・老婆坂の裏門に、もう一人の母が迎えに来る

陸は、門の外に立っていた。砂利道の上で、右手を横に伸ばしている。誰かと手をつないでいる形で、指が少し曲がっていた。隣には誰もいない。
怪談

津田沼の跨線橋、二十三時二十六分

隣に並ぶ市道の跨線橋の欄干に、銀色の風船が引っかかっている。紐が街灯の柱に絡んでいるらしい。風に揺れて、こちらの窓の高さまで浮いてきた。
怪談

成田・地蔵ヶ原の三叉路で、迎えに行く相手はいない

三叉路の角に地蔵が立っていた。赤い前掛けをしている。足元に缶コーヒーが並ぶ。エンジンを切ると、畑のほうで、どさっ、と鳴った。
怪談

新三郷の采女ガード、十七時十一分

雨の夕方、新三郷駅からタクシーで采女ガードをくぐった。短いはずの穴の中で水を四つ数え、窓を二回叩かれ、出てから見た携帯は乗った時と同じ十七時十一分のままだった。
怪談

坂東市延命院の胴塚、明け方に増えた幟の数

門は閉まっていた。門の横に、木の案内板が立っている。神田山延命院、と読めた。瀬川が手を合わせた。俺も真似をして合わせる。どん、と音がした。
怪談

大手町の将門塚の配信に、父が映っていた

配信者は歩道に立ったまま、広場には入らなかった。歩道の奥から、スーツの男が歩いてきた。鞄の持ち手に、黄色い反射材の飾りがぶら下がっていた。
怪談

砧公園裏の第六天の森、店番の午後に鋸の音がした(世田谷・岡本)

奥の作業場から、シャッ、と音がした。鉄を擦る音。父だ、と思った。現場が早く終わって、裏口から入ったんだろう。声をかけたけど、返事がない。
怪談

池子トンネルの一円玉

外に出ると、また墓石の列。里奈が助手席で身をよじった。隙間に指を差し込んで、何かをつまみ出す。一円玉だった。「康介の?」「知らない。前の持ち主のだろ」