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2026-09

怪談

声を出さない群衆

日当を目当てに参加した群衆撮影。声を出さずに怒る顔を演じるうち、衣装に付いていない白いボタンが現れ始める。役者が去っても、町の人を演じた者たちは中庭に残った。
怪談

面接の椅子

四か月ぶりの面接で、履歴書に書かなかった仕事の話を訊かれた。廊下には、長く勤めたという男が、昔捨てたはずの鞄を持って座っていた。
怪談

歌わない人

合唱団へ入った多恵子は、自分の声を隠して歌っていた。見学の男が来るようになってから、歌わなくても合唱がよく揃う。
怪談

朝の抜き打ち

予定にない避難訓練の放送が流れた朝、階段で知らない男が社員を待たせていた。外へ出ると、大勢の人がビルへ入るのを待っていた。
怪談

折り返しの赤

三年ぶりにレースへ戻る旧友と走った。折り返して来る若い走者の中に、高校の時のその友人がいた。
怪談

同じところで笑う

古い自主映画の同じ場面で、元部員たちは一斉に笑った。ところが、何がおかしかったのかを話すと、一人ずつ別の場面を見ていた。
怪談

見学の人

建築模型の工場へ来た少年は、見せた作業よりも、働く人の動きをよく見ていた。駅まで送る間にも、彼の体へ新しい仕草が増えていった。
怪談

風のない売場

布店を手伝っていた夏、雨の降っていない日に傘を畳む客が来た。別の客は、店の前にあった川の話をした。
怪談

花を持たない人

店先の老人は白い花束を抱えていた。先輩がそれを受け取ったように見えたが、本人は「何も持ってなかった」と言う。
怪談

目を開けたモデル

初めて人物画のモデルを務めた春菜は、受講者全員が閉じた目を描いていることに気づく。眠っていないと確かめるため、壁の時計を見続けた。