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姿が見える

怪談

明るくなるまで

最後の観望会。空を向く望遠鏡には、昼の土の道が見えていた。
怪談

坂の花壇

町に知り合いを作ろうと、共同花壇の植え替えに参加した美津子。奥に残された赤紫の花は、彼女が立つたび、根を抜かずに少しずつ近づいてきた。
怪談

窓の縁

娘の働く洗車場で、車の窓に拭き取れない筋が残った。窓を下げると、それだけが縁の上に起き上がった。
怪談

冬の分

庭で薪を割ると、橙色の粒が二つ、頭上に残った。斧を置いても木の割れる音はやまず、粒は薪棚から家の裏戸へ移っていった。
怪談

服を返す日

辞めた店へ返す仕事着を洗い直した。乾燥機からこぼれた熱い砂に、小さな透明の殻が交じっていた。
怪談

昼間に来た人

退職した高瀬は、旧友を昼に訪ねた。幼い頃に一度会った娘が、何度も来たはずだと言った。
怪談

白を持つ手

日曜に二局打ち、勝った方が蕎麦を奢る。そんな付き合いの相手と盤を挟んでいた時、白い石をつまむ指が、石と離れなくなった。
怪談

横になった人

敷布団を試した妻が、家具店の売場で眠ってしまった。起こさずに待つ夫は、その足元の織り目の中に、もう一人寝ている者を見つける。
怪談

後ろを空けて

人物を描く会で、モデルの椅子が白い壁から離れなくなった。描き直している高井さんは、何度見てもここがおかしいと言う。帰りたいと答えた人の手は、離れた入口へ届いていた。
怪談

網の上を歩く

二十球を打ち終え、仕事仲間と屋上の打席を出た。床へ落ちたネットの影に、靴が引っかかった。