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姿が見える

怪談

二人をお願い

甥を預かりに姉の家へ行った。居間には、どちらから見ても背中しか見えない男がいた。姉が頼んでいたのは、子供一人の留守番ではなかった。
怪談

夏の斜面

閉じたスキー場へ、昔の友人と登った。車は下に見えていた。足が引かれるのは、別のほうだった。
怪談

天井の晴れ間

プラネタリウムの投影を止めても、天井は青空のままだった。九人の客が見上げる先に窓が開き、誰かがこちらを覗き込んだ。
怪談

付き添いの人

会社の先輩と献血へ行った。先輩が奥へ入っている間、窓際で待つ女の人が、私の目の前で年を取り始めた。
怪談

水をかけないで

囲碁会に初めて来た男と、芳乃は小さな盤を挟んでいた。焦げた砂糖の匂いがして、男の袖口から煙が上がった。
怪談

泣いた子

実家へ行く娘の袋に、タオルが増えていた。母には昔から、死んだふりをして子供を泣かせる癖がある。やめさせようと訪ねた美緒は、娘が付き添っていた相手を初めて見る。
怪談

鳴らしてみる

返品された鉢を調べ直す午後。食器卸で二十三年働く信岡のもとへ、いつもの引き取りの男が来る。今日は、見たことのない二人を連れていた。
怪談

右の流し

転職を機に借りた古い下宿で、共同洗面台の半分だけが使えなかった。入院する大家から留守中の世話を頼まれ、流しに詰められた茶色い塊へ水をかける。
怪談

滑走路の端

模型飛行場を返す最後の日、篠田は作り上げた飛行機を長年の仲間へ譲る。敷物を剥がしている二人を、草地の奥から男が見ていた。
怪談

うしろも短く

久しぶりに引き受けた友人の散髪。長い髪を持ち上げると、襟足にもう一つ、よく知る口があった。