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物の移動・増減

怪談

新潟ロシア村のマトリョーシカは、ひとつ多い

新潟ロシア村で買ったマトリョーシカの話を、三人から聞いた。小学校の同級生で、今も年に一度は集まる仲だという。三人とも、四十に手が届くくらいの歳だ。話は一人ずつ、別々の日に聞いた。食い違うところも、聞いたまま並べておく。
怪談

人穴富士講遺跡、夕方の十二基目

四時二十分に、最後の二十袋を下ろし終えた。戸部は荷台のあおりを上げて、伝票の数字を指でなぞった。配合飼料の二十キロ袋が、二十。家の人は搾乳の時間で、牛舎から出てこない。判子は、牛舎の柱に下げた缶の中にある。
怪談

中沢池公園の紙コップ

座面に、紙コップが二つ並んでいる。今度は口を上にして、きちんと立っている。一つではない。二つだ。月曜は一つ。水曜は二つ。数えてどうなるものでもない。
怪談

坂東市延命院の胴塚、明け方に増えた幟の数

門は閉まっていた。門の横に、木の案内板が立っている。神田山延命院、と読めた。瀬川が手を合わせた。俺も真似をして合わせる。どん、と音がした。
怪談

池子トンネルの一円玉

外に出ると、また墓石の列。里奈が助手席で身をよじった。隙間に指を差し込んで、何かをつまみ出す。一円玉だった。「康介の?」「知らない。前の持ち主のだろ」
怪談

西新井トンネルから、五分で帰る

地下道に入ったら電話をかけて、五分で帰ると言う。ばあちゃんはそう教わった。画面の向こうの壁に黒いシミがあり、階段の下には、誰かの忘れた黒い傘が一本立てかけてあった。
怪談

梶ヶ谷トンネルで増えた傘

後部座席に、ビニール傘が一本、横になっていた。さっきの客のだ。いや、客は開いて帰った。俺はこの目で見ている。降ろした後も、座席を確かめた。
怪談

憾満ヶ淵の化け地蔵、靴の中の石

憾満ヶ淵の並び地蔵を見に行った夜、宿の障子に影が並んだ。拾った小石は、乾かなかった。
怪談

ひびの行き先

父と受け取りに来た手作りの鉢。底のひびが浮き上がり、別の器へ移っていく。
怪談

色が乾く

閉店前の写真館で店主の顔写真を撮る。白い背景紙に色が滲むたび、道具や肌から同じ色が失われていく。