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kikaisenban

怪談

まだ青い実

六月、叔母の庭で葡萄に袋を掛けていた。新しい袋から落ちたのは、まだ実ってもいない葡萄を食べたあとの皮だった。
怪談

両手を空けて

夜の港で、相良は船から降りる女の荷物を受け取った。腕は重さで下がったのに、そこには何も見えなかった。女は手を抜き、今度は息子を降ろすと言った。
怪談

二人をお願い

甥を預かりに姉の家へ行った。居間には、どちらから見ても背中しか見えない男がいた。姉が頼んでいたのは、子供一人の留守番ではなかった。
怪談

天井の晴れ間

プラネタリウムの投影を止めても、天井は青空のままだった。九人の客が見上げる先に窓が開き、誰かがこちらを覗き込んだ。
怪談

洗ったもの

二人暮らしを終える日、最後の皿を洗っていた。水は流れているのに、音がしない。受け取った皿は、表から見ればいつもと同じで、裏だけが指で押した土の形をしていた。
怪談

夏の斜面

閉じたスキー場へ、昔の友人と登った。車は下に見えていた。足が引かれるのは、別のほうだった。
怪談

付き添いの人

会社の先輩と献血へ行った。先輩が奥へ入っている間、窓際で待つ女の人が、私の目の前で年を取り始めた。
怪談

当たる前

弟の事故の謝罪へ、桐子は付き添うことになった。相手の手首はもう治っているという。菓子折りを置いたとき、窓ガラスにひびが入り、座っている男の肩が横へ引かれた。
怪談

食べてから帰る

婚約を解消した二人は、取り消し損ねた予約を使って最後の食事に出かける。食べたことのない料理が、運ばれる前からどうしても欲しかった。
怪談

水をかけないで

囲碁会に初めて来た男と、芳乃は小さな盤を挟んでいた。焦げた砂糖の匂いがして、男の袖口から煙が上がった。