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kikaisenban

怪談

灰皿だけの値段

閉めた店の灰皿を売るため、昔作った怪談を商品説明へ加えた。見てから買いたいという客の前に、話の通りの男が現れた。
怪談

空いたところ

三年暮らした友人の家を出て、一人の部屋を借りた奈央。家具を置かずに残した床で夕飯を食べていると、足を伸ばせなくなった。何も見えない場所に、手がつく。
怪談

雨戸のない晩

夜回りの後ろには、家がきしむような音がついてきた。いつも同じ空き家の前で止んでいたが、その日は雨戸が外されていた。
怪談

連れていってくれ

田淵の遺体が見つかったのは翌朝だった。その前の晩、本人はずっと、人のいない場所へ逃げようとしていた。
怪談

こぼした水

事務所の引越を手伝った日、床に水がこぼれていた。何も持っていなかった社長が、いつものように、自分がこぼしたのだと謝った。
怪談

剥がす前の壁

閉館する旅館で、池の魚を移す手伝いをした。死んだ鯉に貼りついていた花柄の紙を、三日後、二階の部屋で見つけた。
怪談

お話が済むまで

長話が迷惑な山崎さんと同室になった。けれど、その晩は彼が喋り始めるたび、窓や廊下にいた女性がいなくなった。
怪談

未開封の土産

父の箪笥から、子供のころに買ってもらったバスが出てきた。遊んだ感触は覚えている。それなのに、箱の封は切れていなかった。
怪談

覚えのない顔

戸棚の後ろに溜まっていた白いものは、爪に似ていた。その裏を見てから、見覚えのない男の顔が思い浮かぶようになった。思い出すたびに、顔の向きが変わっていた。
怪談

手伝わなくていい

用具のテントに向かって、子供たちがじゃんけんをしていた。相手は白い顔の男だという。男の左手を見てから、私は祭りの手伝いを断ればよかったと思った。