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kikaisenban

怪談

誕生日を変える

恒川の家に、年齢も誕生日も分からない人が暮らしていた。祝いのケーキを頼まれて訪ねると、その人の頬が誰にも触られずに跳ねた。
怪談

供えたままの花

きれいなままの菊を、引き取ってほしいと男が来た。常連客の夫だと言う。花屋の佐恵がその家を訪ねると、男の写真を囲んで同じ花が積まれていた。
怪談

合わせない鍵盤

閉める音楽教室で、最後の調律を頼まれた。合わせたばかりの鍵盤が狂う。手を止めても、隣の仏間から同じ高さの音が続いていた。
怪談

脱衣場の下

長く勤めていた若者が辞めてから、共同浴場の脱衣場に臭いがするようになった。鼠の片づけを任せきりにしていた管理人が、自分で床下へ潜る。
怪談

仕事をくれる子

割られた窓を直して回るガラス屋に、客が言った。小さな子を現場へ連れてこないでほしい。店主も従業員も、その子供を知らなかった。
怪談

父の転居先

街で見かける父は、死んだときの姿のままではなかった。八年かけてその暮らしを追った佐和は、知らない家の供物に自分の写真を見つける。
怪談

空気を抜く

救命講習の片づけで、人形から抜いた袋が呼吸を始めた。捨てようとすると、講師は「せっかく、できたのに」と言った。
怪談

四人で立つ

合併後の会社研修で、年長の契約社員は若い社員たちと背中を合わせる。四人で立てたはずだった。ところが腕をほどこうとすると、真ん中から押し戻された。
怪談

窓の赤い泡

休憩施設の喫煙所で、ガラスの赤い跡が泡になって離れた。高速道路へ戻ると、その泡が窓の外を車と同じ速さで飛んでいた。
怪談

好きだった菓子

釣りへ行く夫の袋に、私の好きな菓子が入っていた。別の女へ渡す物だと思って後を追うと、夫は川岸で私の名前を呼び、石に向かって手を合わせていた。