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kikaisenban

怪談

まだ人がいる

盆踊りの終わった公園で、落とした団扇が拾えない。誰もいないはずの場所が、満員の人混みのように窮屈だった。
怪談

梶さんの声

退職を控えた先輩と働く木工所。声の出なくなった本人の傍らで、長い板が同じ声で話し始める。
怪談

ひびの行き先

父と受け取りに来た手作りの鉢。底のひびが浮き上がり、別の器へ移っていく。
怪談

色が乾く

閉店前の写真館で店主の顔写真を撮る。白い背景紙に色が滲むたび、道具や肌から同じ色が失われていく。
怪談

食べ終わった席

祝宴のあと、冷めた弁当を食べる友人の足元へ、温かい米が落ちてきた。
怪談

明るくなるまで

最後の観望会。空を向く望遠鏡には、昼の土の道が見えていた。
怪談

息の届く席

姉が泳ぐプールの見学席で、私の耳元に誰とも合わない呼吸が届いた。
怪談

坂の花壇

町に知り合いを作ろうと、共同花壇の植え替えに参加した美津子。奥に残された赤紫の花は、彼女が立つたび、根を抜かずに少しずつ近づいてきた。
怪談

畳んだままで

山歩きの宿で、使わない上段の毛布が肩へ掛け直された。四つに畳まれたまま、誰かが寝返りを打っていた。
怪談

窓の縁

娘の働く洗車場で、車の窓に拭き取れない筋が残った。窓を下げると、それだけが縁の上に起き上がった。