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kikaisenban

怪談

小宮の味方

小宮には、子供のころから何かがついていた。五十二歳になったある夜、その小宮が着替えも持たず、深見の家へ泊めてほしいと現れた。
怪談

焦げたところ

友人の家で食べた薄い焦げ皮が忘れられなかった。もう一度分けてほしいと訪ねた台所には、ボウルで押さえられた白いものがいた。
怪談

落とし主

古本屋の飼い猫は、いつも濡れた忘れ物を運んできた。やがて忘れ物より先に、持ち主が店へ現れるようになった。店主は本を減らし、代わりに椅子を増やしていった。
怪談

裾を持っていて

閉店間際、花嫁が裸足で貸衣裳店へ戻ってきた。脱ぐのを手伝ってほしいという。背中のファスナーを下ろすと、肌着があるはずのところに、青い花柄のブラウスが見えた。
怪談

目を開ける前に

早朝に車を出してもらうため、友人の美佳の部屋へ泊まった。夜明け前に水を飲んで戻ると、寝室にだけ朝日が差していた。光は、眠る美佳の片目から漏れていた。
怪談

父に借りる

十五万円を借りるため、四か月ぶりに実家へ帰った。父はいつも通り私の言い方を直し、財布を取りに座敷へ行った。戻ってきた父は二人いた。
怪談

辛くなかった

別れを告げるため訪れた部屋で、修平はいつもの麻婆豆腐を作っていた。食べ始めると、テーブルの下で私の裸足をぬるいものが舐めた。
怪談

壁まで泳ぐ

水曜の成人水泳教室で競う沢村さん。水の上ではいつも通りなのに、潜ると身体が小さく見える。二十五メートルの壁へ向かうたび、透明なものがそっと彼女を戻していた。
怪談

声を出さない群衆

日当を目当てに参加した群衆撮影。声を出さずに怒る顔を演じるうち、衣装に付いていない白いボタンが現れ始める。役者が去っても、町の人を演じた者たちは中庭に残った。
怪談

面接の椅子

四か月ぶりの面接で、履歴書に書かなかった仕事の話を訊かれた。廊下には、長く勤めたという男が、昔捨てたはずの鞄を持って座っていた。