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kikaisenban

怪談

暗いところの米

父の米屋で袋を受け取る客の足元に、四つん這いの人が見えた。倉庫の古い米櫃は、すくっても減らなくなっていた。
怪談

休園日のアヒル

休園日の動物広場で、アヒルが人の声で返事をした。池の砂からは、何のものか分からない骨の欠片が出てきた。
怪談

海までの踊り場

旅館の階段に滑り止めを貼り直すと、一本余った。夕食のあとに数えると、今度は段が増えていた。
怪談

眼鏡を貸す

同僚に借りた眼鏡を掛けると、耳の手前に小さな横顔が見えた。十六年間、向かいの机にいた男だった。
怪談

氷屋の車輪

氷屋の最後の営業日、古い荷車へ載せた六本の氷に、知らない家が映った。氷を箱から出すと、車輪だけが走り始めた。
怪談

郵便受けの息

母の家の郵便受けから、別居する娘の寝息が聞こえた。母は毎晩それを開き、娘が帰ったことを確かめていた。
怪談

父が見つけた階段

父が借家の床下に階段を見つけた。段は横向きに続き、父は家の壁に足をつけたときだけ真っすぐ立てるようになった。
怪談

猫の糸巻き

祖母の家を片づける孫娘を、老猫が糸を引いて助ける。事故を免れるたび、家の壁の輪郭が薄くなっていった。
怪談

お別れのラッパ

父の古いトランペットを吹くと、息を入れる前に音が出た。別れの曲を頼んだ父の友人は、その声を知っているようだった。
怪談

砂糖を量る午後

古い秤で砂糖を買った客は、必ずもう少しと頼んだ。店主が足すたびに客の声が幼くなり、店の奥へ小さな靴が集まった。